経営分析をする場合、資産の内容を吟味せずに、流動比率がいいからといってその会社のバランスシートがいいと判断することはとても危険です。
流動資産に、たとえば売掛金という将来の収入源があっても、本当に回収可能かの判断をどこまで厳しく追及しているか疑問になる会社がたくさんあるからです。
このような資産を前提にいくら経営分析をしても何も意味がありません。
流動比率200%以上、当座比率100%以上であれば健全経営であるといった判断基準がありますが、そもそも中小企業の決算書は税務上の決算書です。正直、この決算書を元に経営分析をしても何も意味がないとまでは言いませんが、そんなものです。
経営分析ではいい結果なのに、どうしてうちの会社はこんなにしんどいのかといわれる経営者もいます。
答えは、収益を生む資産が少ないためです。特に地方になればなるほど、資産が多くありますが残念ながら収益を生まない土地などが大半です。
収益を生まない資産は維持費という支出がかさんできます。
このような場合は、資産の中身を替えてみることです。
一度、現金に替えて、収益を生む資産に変革することです。
確かに、不動産、特に土地は地方になれば様々なしがらみがあり、なかなか売却するには勇気がいるかもしれません。
しかし、そのために、費用ばかり出るバランスシートのままでいい訳がありません。
競売になってしまうより、自らが手放すことが大切です。
バランスシートの心地よさが分かれば、バランスシートの分析は必要がないと言ってもいいくらいです。
ご自身の心地よさを早く見つけることが何より大事になります。
通常、経営分析には収益性分析、安全性分析、効率性分析そして生産性分析があります。
収益性分析とは、主に損益計算書の利益と売上高、または損益計算書の利益と貸借対照表の総資本等と比較することを言います。
なお、収益性分析において最も重要な指標は、総資本利益率(ROA)です。ROAは、売上高利益率(当期純利益÷売上高)と資本回転率(売上高÷総資本)とに分解されますが、これは、ROAを改善するためには売上高利益率を改善する方法と資本回転率を改善する方法の二つがあることを意味します。
したがって、ROAが高い企業は収益力があるため売上高の利益率が高く、なおかつ資本効率が高いため資本を効率的に運用して売上高に結びつけることができる超優良な企業であると言えます。
安全性分析とは、主にバランスシートの資産と負債、資本の金額を比較することで企業の支払能力、倒産危険度、経営の安定性などを分析することを言います。代表的なものに流動比率と自己資本比率があります。
①流動比率 流動資産 ÷ 流動負債
②当座比率 当座資産 ÷ 流動負債
③自己資本比率 自己資本 ÷ 総資本
④固定長期適合率 固定資産 ÷ (自己資本+固定負債)
⑤有利子負債月商比率 有利子負債 ÷ 平均月商
効率性分析をする目的はバランスシート・損益計算書の財務諸表データを利用して、どれくらい資本を有効活用しているかを評価測定することです。
そして、効率性分析をする際に利用する各種効率性指標は、自社の時系列データの推移を比較する為に利用したり、同業他社や同業種の平均値と比較をしたりする為に活用します。
① 総資本回転期間 総資産÷売上高
② 固定資産回転期間 固定資産÷売上高
③ 棚卸資産回転期間 棚卸資産÷売上原価
④ 売上債権回転期間 売上債権÷売上高
⑤ 仕入債務回転期間 仕入債務÷売上原価
⑥ 総資産回転率(総資本回転率) 売上高÷総資産
⑦ 売上債権回転率 売上高÷売上債権
⑧ 仕入債務回転率 売上原価÷仕入債務
生産性分析とは、企業が事業に投入した、ヒト・モノ・カネが産み出した付加価値を分析することです。
主な生産性指標は次の通りです。
①労働生産性=付加価値÷平均従業員数
②設備生産性=付加価値÷有形固定資産額
③資本生産性=付加価値÷総資本(総資産)
④売上高付加価値率=付加価値÷売上高
以上の経営分析の話は一般論です。
経営においては次のように簡単に考えるべきでしょう。
バランスシートの分析で流動比率等がありますが、バランスシートの分析には、比率より金額の方がしっくりくるものです。
朝の財布の中身より夕方の財布の中身が10%増加したという表現は日常生活では使用しません。お金は金額の多寡で判断します。
だから、流動資産の方が流動負債より○○円多い、自己資本は資本金より○○円多いといった感じがいいのです。
しかし、損益計算書の分析は違います。こちらは金額より比率、たとえば、売上高に対する利益などの率で考えたほうがいいのです。