「経営方針や指示が、全社員に早く確実に届くようになった」状態は、社長にとって、嬉しい限りである。
しかし、そうは簡単にいかない。社長と取締役の間だけでも、社長の言っているニュアンスはなかなか伝わっていない。20年も30年も一緒に仕事をしていても現実は難しい。
立場の違いは、いかんともしがたいが、ここがズレていれば実行、業績、お客様からの評価と、様々問題が出てくる。
解決の決定打はないかもしれないが、
1.わが社の経営構造、事業体質を絵にして全員が頭の中に叩き込むまで繰り返し繰り返し教え込む。
2.社長が体験する多くの社外事例を、一緒に体験し、場の共有を図り続ける。
ことが大切だと痛感する。
1.は、理事長の牟田が常々提唱している、事業体系4つの○、を基本に、自社の事業を当てはめて、絵を描き、社長が話している項目が、今何処のことを話しているかを、お互いが確認するようにする。
最初は面倒だし、イライラする。そして社長の話もあちこちとバラバラに飛び出してくるので、幹部といえども、体系的にどこの、何を指示されているのかわかりづらい。
中堅企業といえども専務、常務は営業や製造、経理等の責任者、部門利益の代表者であり、全体最適、全社利益を考えづらいのである。だから余計に事業戦略の全体図を頭に描きお互いに確認をしながら、指示の徹底を確認して欲しい。
2.については、互いに忙しくても、社長が体験したことを、後ででも同じ体験をさせるか、一緒に出張し皮膚感覚で幹部に感じてもらうことを繰り返すしかな い。中国の躍進を上海に行った事がある人はすぐわかるし、ニュースも目に飛び込んでくるが、社長が社内でどんなに上海体験を熱く語っても、行ったことのな い人には一般教養にしかならない。この経験は、多いはずだ。
ましてや、インターネットでどんなに見てもテレビを見ても、伝わらないし、ましてや商売のヒントや事業チャンスをつかむことはできない。共通の体験がある と社長が何を感じどうしたいかがだんだんわかってくる。時間も費用もかかるがこれに勝る役員教育はないのではないかとさえ思う。
人一倍商売感覚が強く、創業者であれば、判らない人のことが理解できないかもしれないが、判っている人が降りていくしかない。
さらに、本当に伝わっているかどうか質問をして確認できれば、後は実行を見守り軌道修正に気を配ればいい。
共通の言語と体験。同じ日本語を話しているが意味していること見えている世界がまったく違うことを社長が知って対処していただきたい。