其の壱
あなたはバランスシートに関心がないかもしれませんが、
バランスシートはあなたに関心を持っています
少し、ゾッとするような格言ですが、経営者はこの格言から決して逃げてはいけません。
バランスシートの格言の集大成と言えるもの。それがこの格言です。バランスシートに関心が薄い経営者に対して、この格言がすべてといってもいいくらいです。
社長は関心がないバランスシートも、バランスシートは社長の行動を見ているのです。
別の言い方をすれば、第三者が会社のバランスシートに関心があるということです。
なぜなら、バランスシートで会社の歴史がわかりますし、社長が誰と付き合っているかまでわかるからです。
第三者とは誰でしょうか。
お金を借りている場合は、貸している金融機関になります。また、投資家もそうです。もちろん、取引先も関心がありますが、取引先にバランスシートを見る力がなければなりません。
会社の不正を発見する場合もバランスシートを注視します。ですから会計士はバランスシートに強い関心を持っています。
優秀な経理の人は、自社のバランスシートに関心があると思いますが、社長自身に関心がない環境の場合、バランスシートに関する情報を社長に提供する意味に疑問を持ってくるため、やはり、社長次第なのです。
第三者が会社のバランスシートを通じて社長のことを見ていると言われても、これだけでは、なかなか社長もバランスシートを積極的に見ることはありません。なぜでしょうか。
簡単な話、見慣れていないのです。また、損益計算書や資金繰りと違い、実感できないためです。
流動比率などの経営分析の知識はあり、流動比率は200%が望ましいくらいの知識は持っていても、それはそれとして、日々の動きにはなかなか結びつかないため、それ以上のことは考えません。
バランスシートは、そんなに変化しないからなかなか見ないと言われる社長もいます。
しかし、それは逆なのです。バランスシートの月末の残高は確かに変化しません。変化しても一定になっています。
例えば、借入金は、きちんと返済していれば、毎月の残は、一定金額、減少しているはずです。
売掛金にしても、急激な売上の増減や取引先の倒産等がない限り、月末残高は、前月末のそれとそれほど変動はありません。
変化しないから見ないのではなくて、変化しないからこそ見る必要があるのです。
逆なのです。
なぜでしょうか。
変化しない性質のバランスシートの残高が変化したということは、会社に何かが起きたことになります。それがいいか悪いかは別にして。
その変化自体が異常事態なのです。
会社のことを知る為に経営分析をすることがありますが、バランスシートは流動比率などのような経営分析をしても、正直、マスターベーションにすぎません。
「流動比率が250%あるのにどうしてこんなにお金に苦しんでいるのか」「自己資本比率が50%を超えているのにもかかわらず、正直、来年まで持つかどうかわからない」という、なんとも良く分からない状況になってしまうのです。
経営分析の「安全性分析」では合格点をもらっても「それがどうした」になります。
このことは、人の標準体重を見ても同じことが言えます。
医者曰く、私の標準体重は70キロ(慎重は178センチです)らしいのです。10年前に、73キロまで体重を落としましたが、正直、体を悪くしました。自分が考えている理想の体重は78キロから83キロの間なのです。医学的な標準体重ではありません。
会社も同じことが言えるのです。
会社の標準体重は、社長自身が決めればいいのです。それが、あとから出てきます、バランスシートの心地よさなのです。
バランスシートはあなたを見ています。