先週、恒例の「全国経営者セミナー 1月26日~28日」を東京のホテルオークラで開催した。今回で121回目、40年以上続けており、わが国でも屈指の社長セミナーと自負している。
長年開催しているだけに常連の参加社長も「会長になったよ」と、仲間の経営者と旧交を温めながら、息子さんを紹介している姿が目立ってきた。
昨年から正式に「後継者倶楽部」を組織し、二世、三世の方々が交流できる場を設けている。今回も数十人の方が参加され夜遅くまで盛り上がっていた。
3日間の講座の中でも老舗中の老舗、200年~300年と続いているオーナー社長の方々にご登壇いただきお話を伺った。
講師控室でも、職場だけでなく「孫が小さいうちから、商売のことや人生を、直接肉声でどう伝えていくかが大切だ!」と様々な意見が飛び交っていた。
老舗でなくても、創業当時やちょっと昔は、家と仕事場が一緒であったり、工場の一角が子供たちの遊び場であることはめずらしくない。我々の年齢でも両親が早朝から深夜まで働く姿、背中を見て育ったものだ。
時代が違うと云われれば仕方がないが、人間の価値観が10年、20年で急に変わるものではないし、「変えてはいけない価値観」もある。
自宅と会社が離れてしまった今日、子供たちには親の働く姿が見えづらくなってしまった。
血族、親族に後継を託したいのであれば、先程の老舗の当主の孫教育ではないが、様々な工夫をしておかなければならない。
社長であれば、自宅に書斎でなく、第二の社長室を作ればいいし、年度初めの事業発展計画の発表会や会社の主要行事に子供たちが小さくても末席に座らせればいい。
たった一日や二日のことだ。学校を休ませてもいいと思っている。学校も今では、家族旅行であれば基本OKの時代だ。
しかし決して特別扱いをしているわけではない。職場に入ったら、若い時分はひたすら目の前の仕事に全力投入させ、社内の実務に精通させておかなければ、頭でっかちになり上席者になって苦労する。
周りは特に意識しているので、早期の帝王学教育より定期的な外部からの刺激を与えつつ実務第一で鍛える方が結局本人のためになる。
ただ人脈の拡がりは、父親の財産を引き継ぐ意味でも大切な実務の一つである。ここのバランスが難しい。 さ来週も博多で、「異業種の後継10数名の勉強会」を主宰してくる。
上杉鷹山の教えに「人知り300両」とあるように、会社の仕事だけでは得られない財産も築いていかなければ視野が狭くなる。
私自身、先週の後継者倶楽部のメンバー向けに約70分ではあるが講話をさせていただいた。先の老舗のオーナーの講話などもCDで是非聞いていただきたい。親子はとかく照れくさい。譲る側、譲られる側、一緒に勉強の機会を持ち、互いの理解がなければ事業承継は大きなリスクとなる。