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社長業

Vol.158 企業の緩み「10の兆し」

作間信司の経営無形庵(けいえいむぎょうあん)

 東京も、一時期ほどの緊張から解放されたような空気に包まれている。
 
 震災、原発事故から約4か月が過ぎようとしていて、業種や条件によってまちまちではあるが、受注が戻って平時の状態に戻って落ち着いた企業や、部品の供給が安定化した企業、また二桁の伸び率や、特殊な例では史上最高を更新している企業さえある。
 
 だまだ予断を許さないとはいえ、被災地とは違い緩和ムードである。
 更に猛暑が襲い、節電で事務所も工場も電車もとにかく暑い。
 暑さで集中力が続かないことに加え、「気の緩み」と「クールビズ」で二重に緩んでしまっては、次の波を乗り越える前に、会社が弱ってしまう。
 
 当然、想定される次の波は「復興のための消費税増税」である。
 掛け込み受注の急増後に、大きな後退局面がくることは過去に学習しているが、遠い過去のために、もうハッキリ覚えていない。
 記憶に頼らず、過去の実績を数字で押さえておこう。この長期デフレ下のもとでは、過去のパターンが参考にならないかもしれないが、好調から一転、急落は誰でも想像がつく。
 その好調時の「緩み」が一番怖い。
 
 解っているつもりでも好調になれば、「緩みの兆し」は、会社のあちこちに足跡を残していく。
 
1) 経費が少しづつ増えていく。率も額も。
2) 労働分配率が高くなっている
3) 社員が取引先にたいして傲慢になってくる
4) 在庫が増えて、残っている
5) 小さなミス、クレームが続けて起きる
6) 時間、約束がルーズになり始めた
7) 事務所、トイレが汚くなり始めた
8) 小さな事故が続けざまにおこる
9) 借入金がじわじわ増えている
10) 朝の出社時間が遅くなってきた・・・
 
 いろいろな事象が出ても、業績が伸びている時や、忙しい時はついつい見逃してしまう。
 そして、ある日突然、大きな事故や大トラブルが発生する。
 
 「ヒヤリハット」という言葉は聞かれたことがあると思う。工場関係者の間ではよく使われるが、上記のような法則性を表した言葉である。
 
 先日もあるメーカーを訪問した。これまでは、先代の教育、率先垂範よろしく事務所もトイレもピカピカであったが、汚れが3階のトイレで目立ってきた。
 好調なうちにもう一回、脇をしめて経営を引き締めて欲しい。利益が出ても無駄遣いせず内部留保に努め、次に来る増税不況、まだ先かもしれない金利上昇に備えて借入を軽くしたい。この20年自体が環境としては異常なのであるから、今の金利が倍になっても利益の確実に出る体質にしておきたい。

 

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