前回「教育方針を決めて、目標に向けて少しずつ成長させていく方法」」についてお話しました。今回は「今年の新人さんの傾向と育て方」についてお話します。
昨年に比べて新人さんの傾向を一言でいうと、昨年以上に全体として「おとなしい」が私の印象です。今から新人研修が始まるのを期待して待つというより、気持ちに少し距離をおいてのご参加のような感じを受けました。
コロナ禍の終息も今なお見えず3年目という状況ですから、「手洗い励行・密を避ける・黙食・常時マスクを着用」などの日々を過ごしてきた方々です。少なからずコミュニケーションが十分に取れていない影響が出ているように感じます。そのため参加人数やご依頼いただいた限られた時間の中で、出来る限り個々の発表回数を増やすように研修を進めました。アメリカの心理学者マズローが言うように、人は誰もが「承認欲求」を持っているからです。さらにデジタルネイティブのZ世代の新人さんです。世代の特徴の一つである「納得」の必要性も加味しました。一つ一つの項目は、意識して例年よりスタート地点を下げての説明を心がけ、さらに「何故?」・「どうして?」の問いかけは、『考える』トレーニングとして、またですかと思われるほど口にしました。コミュニケーションをする相手であるお客様に関心を持ち、相手の心模様を分かっていただくためでもあります。
接遇マナーの一つにとても大切な「笑顔」があります。社内でご指導なさる方のご参考までに、「何故」や「どうして」を入れての研修をどのように進めたか書き記します。
「何故、笑顔は大事だと思いますか?」
と聞いて、考えてもらいます。少し待ってから10人位の人に考えた理由の発言をお願いします。個人の発表についてNOは使わず、「そのような考え方もありますね」
と対応してください。ビジネスマナーの正解は必ずしも一つではないからです。発表者の答えを聞いたら、必ずコメントを入れてください。この時の会話の一往復・2往復が心の距離を縮めます。講師の私が伝えたいと思う発表が十人の中からいくつかは出てくるので、それらもしっかり入れます。答えを採用された人は、モチベーションが高まります。笑顔のまとめとして、
「どの答えも正解の範疇でした。皆さん、『お客様へのようこその気持ち』は見えますか?残念ながら見えませんね。どうしたら見えると思いますか?目には見えない『気持ち』を、目でわかる『笑顔』という形に置き換えるのです。笑顔のない応対などあってはならないですね。お分かりになった方、手を挙げてください。」
ここであえて手を挙げていただくのは、今の私の発言を受講者の脳に確認してもらいたいからです。ところが手の挙げ方が、今年の方々は、ほとんど頭より下でした。プラスαの質問発生です。
「手の挙げ方は小学校で習っていると思いますが、頭より上に肘をまっすぐにしてあげます。何故ですか?」
沈黙の時間が出てしまいました。
「この沈黙の時間が現場で発生したら、業務時間内です。時間の損失になりませんか。分からなければ『分かりません』とすぐに意思表示しましょう。それを聞いた先輩や上司の方が対応の判断をなさいます。では手の挙げ方の説明をしますね。頭より下に挙げた場合と頭より上にまっすぐ挙げた場合、目立つのは頭より上に手を挙げた場合です。相手が早く人数の把握が出来ます。たとえ小さなことでも、相手にとってどういう行為をしたらよいかを常に考えてください。お分かりになった方、手を挙げてください。」
笑顔でサッと皆さんの手が頭の上まで挙がりました。
「では笑顔のトレーニングを始めましょう!」
以上のような流れで研修が終了したときの
受講者は、皆さん良い表情をなさっていました。現場でもこのような形で細かなことも含めてご指導いただけると、思わぬところで説明が増えますが、きっと「納得」の数を増やしてくださると存じます。