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税務・会計

第86号 BS「格言」 其の三十二

会社を守り抜くための緊急対策

其の三十二

バランスシートには維持費がかかる

 

 結論からいいます。総資産が大きい会社は、維持費が巨額になります。
 単純計算ですが総資産の金利分を維持費と考えるといいかもしれません。
 具体的に、どのような維持費がかかると考えればいいでしょうか。
 
 【現金】は、そのままでは収益を生まないという意味で維持費がかかります。【当座預金】もしかりです。
 
 【受取手形】は、回収期日まで金利という維持費がかかります。サイトが長い手形を保有していますと、結局、その資金の運用ができないという意味で維持費がかかるからです。もちろん、銀行で割引をすれば金利という維持費がかかってきます。
 
 【売掛金】は将来の入金という意味では、ウエルカムな資産に見えます。しかし、回収期間が長い売掛金や長期滞留している売掛金はもはや、資産価値はゼロになります。
 売掛金が多額にあり、それゆえ、流動資産が大きいため、経営分析をした場合、流動比率が200%を超えているので安心していますと大きなつけが来ます。
 まず、利益が出ている場合、間違いなく税金が未納になってしまいます。
 そして、得意先の倒産の可能性が高ければ、法人税法の貸倒設定限度額以上の損失が予想されることになります。これも維持費になるのです。
 
 【在庫】は、よく言われますように倉庫代という目に見える維持費がかかりますし、借入して商品を購入していれば、金利もかかります。
 また、本当は売れそうもないことは分かっているのに在庫があるために、何とかして売らなければならないという精神的な維持費もかかります。
 
 【固定資産】には資産税、修繕費等がかかります。
 よく、同じ金額を支払う場合、マンションを購入か賃貸かという話がありますが、マンションを購入した場合、ローンや金利の支払いが賃料と同じ場合でも、修繕費等の維持費がかかってきます。
 また、日本は、建物の価値はあまりないとされている実情からしても、マンションは、土地の区分所有のために購入していることと同じだと考えなければいけません。
 不動産の土地に占める割合が大きい一軒家であればまだしも、マンションを購入した場合の維持費やリスクはかなり大きいものがあるからです。
 
 このように資産が大きければ、何らかの維持費がかかっているということを意識した上で資産を増やしてほしいと思います。
 もちろん、資産は、将来、収益をもたらすものであるという原点に戻った場合、現在、所有している資産がはたして将来、収益を上げるのかを考え、そうでなければ現金化しておくべきです。
 
 【負債】を維持するにも費用がかかります。その典型例が、借金の利息です。
 社長個人の会社に対する貸し付け、つまり会社からすれば社長から借金があれば、資本金に振り替えてしまうことも必要でしょう。現物出資となりますが、会社法の改正で、容易になりましたので早めに対処しておくべきです。
 実は負債で最も怖い存在が税金の滞納です。納付期限経過後は、期限の翌日から2ケ月を経過する日までは7.3%の延滞金ですが、2ヶ月目以降は14.6%の延滞金が加算されます。
 消費者金融の金利が問題となり、15%を超える金利は違法になりましたが、まるで、14.6%の延滞金を正当化するようなものです。
 つまり、消費者金融関係の最高金利に匹敵する金利を延滞金と称して徴収されます。
 このように、税金の滞納はとても高い維持費がかかります。
 
 家庭においても、住宅ローン・教育ローンや自動車ローンの支払いが生活費に占める割合が高くなりますと、通常の生活ができなくなります。
 この場合、本当に車が必要なのかをもう一度考えることも必要です。確かに車があれば便利です。しかし、その維持費は固定費なのです。
 破産寸前の人が車を持っていることが結構多いのには驚かされます。それでお金がないと話をしているのです。よくわかりません。
 レンタカーやタクシーを利用すれば、車関係の費用は、変動費に代わります。
 最近では自転車が見直されていますが、ガソリンが高くなったからではなく、生活環境を変えていくことが必要なのです。
 住宅を売却した場合、ローンだけが残ることもありますので、そんなに簡単ではないかもしれません。ただ、問題の多くは生活の習慣を変革できないことにあります。 
 住宅を所有していないといけないという考えがありますと維持費が大変になります。
 ある都銀関係の方のお話ですが、以前は、自宅が自己所有の場合の評価は高く、賃貸の評価が低かったのですが、近年、逆点しているといいます。
 自己所有はリスクが高いという判断だそうです。
 正直、銀行の身勝手な判断基準の切り替えですが、現実を直視することも大切です。
 家庭も身軽にしておくことが今後も大切だと思います。
 
 【資本金】はどうでしょうか。
 資本金が1億円以上になりますと、通常の法人税だけでなく、東京都の場合、外形標準課税が課せられます。
 新規設立において、資本金1000万円以下にしますと設立から2期分は、消費税の納付が免除されます。
 この免除について、搾取で不当だという意見があるようですが、実際に経営をされた方は、この免税措置はとても助かるはずです。
 また、利益が出れば配当金の支払いがありますが、これも維持費になります。
 
 本当にアバウトな考えですが、結局、総資産と負債と資本の合計に対して、維持費がかかっているという認識を持つことが必要だと思います。
 だからこそ、「所有より利用」の経営、減量経営を積極的に推進していただきたいと思います。
 大企業は、今後、さらに大きくし、効率経営を行っていかなければ生き残りができない状況にあります。ですから、今後も大企業の再編が活発に行われることになります。
 これに対して中小企業は、逆に、さらに小さな会社にしていくことが賢明ではないかと思います。
 つまり、身軽になるということです。何を身軽にするかですが、それはバランスシートです。消費税は、売上が1000万円以下であれば、免税業者になりますが、そのために、売上を1000万円以下にすることは本末転倒です。身軽なバランスシートで大きく売上を上げることが重要なのです。
 バランスシートを身軽にするためには会社の分割も必要かもしれません。
 
 

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