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人間学・古典

第三十二話 「足らざるを知る者は」

中国哲学に学ぶ 不況は会社守成の好機

※本コラムは2000年代に井原隆一氏が書き下ろした「不況は会社守成の好機」コラムを再連載するものです。


 

“足らざるを知る者は学を好み、下問を恥ずる者は自ら満す”(一程粋言)

(自分に何か足りないと自覚できる人は学ぶことを好むし、人に問うのを恥じる人は自己満足に陥る)

この言葉の意味を私も体験している。
14才で見習い行員として銀行に入り、夜学を卒業した18才で父と死別、祖父以来の多額の借金を引き継いだ。それらの苦労で円形脱毛症にかかり、半年休職したら昇給ストップ。そのため、全行最低の給料に転落“学なし、地位なし、金もなし、頭髪もなければ、青春もなし”の五無才。

しかし、これを嘆いているほどの余裕はない。幼い弟妹三人の教育がある。少なくとも自分より上級の学歴を持たせたい。

このように“足らざるを知る者”とこではない。心ならず足らざるを知らされてしまったわけである。

当時、五無才のまず一つをなくそうと考えた“学なし”からとして、すべて借本だったが中国の先賢の書を読み続けてきたという次第。

実務的な書物ではなく、心の勉強とでもいおうか。実務的な読書は、現役を去れば不要になるが、心の勉強は死ぬまで役立つ。

読書とは健康長寿の妙薬。いま私の年はまだ九十八才。“足らざるを知る者は”いま私の足らないことは九十八才ではまだなのである。

 

 ※栗山英樹氏から、本コラム井原隆一氏の「人の用い方」書籍と、井原隆一「人の用い方セミナー」収録講演CD版・デジタル版を推薦いただきました!

 監督の仕事は、選手の心を動かし、勝利の高みに導くことです。人をいかに用いて、信頼感を高めるか―――
その答えを求めて、私は井原さんの「人の用い方」のCDを5年間、毎日球場までの往復2時間、車の中で聴き、本をカバンに忍ばせていました。選手は勝利のために厳しい練習をしているわけですから、私は素振りの代わりが勉強だと思っています。

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