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製造業

第238号 日本のモノづくりの最強の武器とは

柿内幸夫─社長のための現場改善

  ロンドンオリンピック、日本代表の選手たちの頑張りも素晴らしく応援で寝不足の方もたくさんいらっしゃることでしょう。下の写真は東京の山手線です。

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 さて、「ナゼ改善が必要か?」というテーマの中で、今回も引き続き「経営を支えるから」についてお話しします。

 1. 世の中の変化は止まらないから。
 2. 工場の中に変えられないものはないから。
 3. 人を育てるから。
 4. 経営を支えるから。

 先回、「プロジェクトX」方式として、とてつもなく難しそうなテーマのプロジェクトに普通の人たちが失敗を繰り返しながらも諦めずに努力を続けていると、結果として大きな成果を出すことができるというお話をしました。

 そして最後の質問が「皆さんの会社にプロジェクトXはありますか?」でしたね。いかがでした、ありましたか?

 もしなかった会社の方は、是非ともプロジェクトXに匹敵するテーマを作り、プロジェクトを始めて頂きたいと思います。そこでもう一つの話をさせて頂きます。

 みなさんもご存じの脳科学者の茂木健一郎さんが「ひらめきの導火線 トヨタとノーベル賞」(PHP新書 2008年)という本で、日本人が持つ独特の独創性を紹介されています。

 欧米における独創性の特徴はノーベル賞がそうであるように、優秀な個人にスポットライトが当たります。

 しかし日本の場合、立派な成果が出た場合でも多くの人は「私がやった」とは言わず、むしろ「私一人ではない、みんなだ」というように譲り合うので、個人にはスポットライトが当たらないことが多いのです。

 その結果、プロジェクトの成果が目立たないのですが、だから独創性がないかというと決してそうではありません。

 例えば日本のトヨタ生産システムのように、全員がカイゼンを実行し、全員がカンバンシステムで表に出て来る問題に真剣に取り組んだ結果、得られる成果も極めて独創的でした。したがって、これは日本独特のものといえるでしょう。

 ただ、私は子供のころから「日本人は、マネが得意だが独創性がない」と教わってきた記憶があります。

 「決してそんなことはない」と頭では理解しようと思っていても、子供のころからの刷り込みがあって、必ずしも自信たっぷりにそうは言い切れませんが、茂木さんの本を読むうちに、その切り口で日本人を見るとかなり独創的であることが分かりました。

 そして、日本人が真に独創的であるならば、私たちはもっとその武器である「改善」に力を入れるべきだと確信を持ちました。

 ただ、この場合に必要なことがあるのですが、全員がバラバラな目標を持っていたのでは力が生かせません。

 「プロジェクトX」がそうであったように、みんなが現在の会社が抱える問題点や向かう方向を共有化し、力が結集できるような準備が前提となります。

 その上で、一人ひとりの力は普通でも、そこにいる「みんながずっと」改善を実行し続ければ、なりたい姿に向かって大きく舵が取られることは間違いがありません。

 ところで、トヨタのカンバンシステムは、後工程の引き取りを前提に、前工程が少ない工程間在庫で後工程に「ギリギリチョビチョビ」と、すなわちジャスト・イン・タイムに供給できるようにする仕組みです。

 もちろんカンバンは自動車のように平準化を前提にできる職種にはとても向いていますが、必ずしもすべての業種で活用できるものとは思いません。

 しかし、カンバンは使わなくても、これからの日本のモノづくりにおける改善のテーマとして、すべての会社が取り組むべきものの一つは、間違いなく在庫であると私は思います。

 理由は、在庫が減れば明らかにキャッシュフローの回転が良くなり、経営力が付くからであり、これこそは一人では絶対に達成できず、会社の全員が協力して取り組む必要があります。

 つまり、まさに日本人に向いたテーマです。そして、その手段が改善であり、それをみんながずっとやり続けることで、確実な成果が期待できるからです。 

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copyright yukichi

※柿内先生に質問のある方は、なんでも結構ですので下記にお寄せください。etsuko@jmca.net

 

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