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採用・法律

第169回 退職者が退職代行を使ってきたら

中小企業の新たな法律リスク

阿部社長は、従業員が退職代行サービスを利用して退職の申し出をしてきたことに受けて、どのように対応したらよいのか分からず賛多弁護士に相談に来られました。

* * *

阿部社長:昨今、退職代行サービスの問題がニュースでも取り上げられていますが、先日、当社の従業員も退職代行サービスを利用して退職を申し出てきました。そもそも当社は退職代行業者を通じての退職の申し出に応じる必要があるのでしょうか。

 

賛多弁護士:退職の意思表示は必ず労働者自身が行わなければならないということはないため、退職の意思表示や手続きを退職代行サービスに任せること自体は問題ありません。そして労働者には退職の自由が認められる以上、会社としても退職代行サービスを通じての退職の意思表示に応じる必要があります。

 

阿部社長:分かりました。退職代行業者とやり取りするうえで何か気を付ける事項はありますか。

 

賛多弁護士:まずは本当に労働者本人から依頼を受けた退職代行業者なのかを確認する必要があります。労働者本人に直接確認するのが早いですが、退職代行サービスを利用している以上、会社からの問い合わせには応じない可能性があります。退職代行業者に対して労働者からの委任状の提出を求めるのがよいでしょう。

 

阿部社長:わかりました。他にも確認するべき点はありますか。

 

賛多弁護士:退職代行業者が弁護士法の非弁行為に該当しないかを確認するべきです。つまり、弁護士法上、法律問題の交渉は弁護士以外の者が行うことが禁止されているため、民間の退職代行業者ができるのは間に入って行う連絡のやり取りだけです。もし、退職代行業者が、労働者に代わって残業代請求をしてきたり、有給取得の可否について交渉を行ってきたとしてもそれは非弁行為として弁護士法違反の可能性が高いといえます。

 

阿部社長:もし退職代行業者がそのような請求や交渉をしてきた場合はどうすればいいですか。

 

賛多弁護士:そのような退職代行業者は弁護士法違反の疑いがあるため請求や交渉には応じないことを明確に伝えて、本人から直接連絡をさせるか、それができないなら本人が弁護士に依頼して弁護士から連絡させるかをしてもらうべきです。会社としてはそのような退職代行業者とこれ以上やりとりする必要はありませんし、すべきではありません。

 

阿部社長:もし退職代行業者がしつこい場合には先生にお願いしてもいいですか。

 

賛多弁護士:もちろんです。

 

阿部社長:ありがとうございます。安心しました。

 

賛多弁護士:退職代行業者に問題がないことが確認できれば、退職代行業者を介して退職の手続きを行います。

 

阿部社長:退職代行業者を通じて貸与品の返却なども要求していいのでしょうか。

 

賛多弁護士:問題はありません。

 

阿部社長:実はその労働者は仕事の引継ぎも終わっていないにもかかわらず、退職日まで有給申請するとして出社しません。困っているのですがどうすればいいでしょうか。

 

賛多弁護士:有給取得は労働者の権利ですので、労働者がどうしても有給消化したいということであれば、会社としては引継ぎが終わっていないとしても原則として有給取得を認めざるを得ません。

 

阿部社長:そうですか。何か対策はないのでしょうか。

 

賛多弁護士:今回のケースでは難しいですが、予め就業規則に業務引継ぎを行う義務がある旨を明記しておいたり、退職の申出期限を退職日前の早い時期に設定するなどして、業務の引継ぎを行うことを促すことも考えられますが、有給取得を拒めるというわけではありません。基本的には労働者との話し合いで解決する問題だと思います。

 

阿部社長:それだけでも効果はあると思います。しかし労働者はそもそもなぜ退職代行サービスなど利用するのでしょうか。

 

賛多弁護士:その労働者の性格的なものもありますが、会社の職場環境が労働者にとって退職を言い出しづらい雰囲気になっていることも多いです。これを契機に会社としても風通しのよい職場環境となっているかを見直してみる機会だと思います。

 

阿部社長:ありがとうございました。早速動いてみます。

 

* * *

 

最近では退職代行サービスを利用する人が増えています。東京商工リサーチの調査によれば、2024年1月以降で退職代行業者から退職手続きの連絡を受けた企業は7.2%、大企業では15.7%に上るとのことです(東京商工リサーチ TSRデータインサイト)。

 

退職代行サービス自体は違法ではありませんが、サービス内容によっては違法となる場合があります。すなわち、弁護士等でない者が、法律的な問題について、本人を代理して相手方と話をすることは非弁行為として弁護士法違反となるため、退職代行業者のような非弁護士が法律的な問題について話し合い(交渉)をすることは禁止されています。

例えば、残業代請求、パワハラを受けたという慰謝料請求、さらには有給取得の有無に関する話合いなどは法律的な問題に該当するため、労働者に代わりこれらの請求や交渉を行っている退職代行業者は弁護士法違反に該当する可能性が高いです。民間の退職代行サービスができるのは単に連絡のみであり、これを超えて交渉や請求を行ってきた場合には、弁護士法違反の可能性があるため、会社としては本人や弁護士から連絡してくださいとお伝えして、交渉に応じるべきではありません。あまりにしつこい退職代行業者の場合は弁護士や弁護士会に相談されることをお勧めします。

執筆:鳥飼総合法律事務所 弁護士 北口 建

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