財務省の発表によれば、今年3月末の日本国の借金は総額で1,143兆円に達する。そして平成27年度も、一般会計予算96.3兆円に対して税収等が59.5兆円なので、不足分36.8兆円の新規国債が発行される。膨張が止まない政府債務に将来の財政破綻が懸念される。
アベノミクスの発動以来、日銀による2013年4月の異次元金融緩和により、2年程度で「インフレ率を年2%」にするために「資金供給量を2倍(138兆円→270兆円)」が目標になった。その後マネーは2倍になったが、個人消費の落込みや原油価格の下落で年2%のインフレが未達に?そこで、昨年10月には長期国債の買入れ量を30兆円増やし、ETFやREITの購入量も3倍にすることになった。
その結果、歴史的に低かった国債利回りはさらに低下して、一時的にマイナス金利も出現。いわゆる『金融抑圧政策』が充分に効果を発揮している状態にある。金融抑圧政策とは、あらゆる手段を講じて国債金利を物価上昇率よりも低い水準に抑え込むことにより、長期的に政府債務の価値を減価させる政策である。第二次大戦後に先進国が採用してきたことがカーメン・ラインハート、ハーバード大学教授等により研究されている。
この政策により、仮に日本の政府債務・約1200兆円の支払金利が、10年国債利回りで現状の年0.4%から0.6%程度に抑圧され、一方で物価上昇率が2%になるならば、1200兆円の政府債務の実質価値は毎年目減りしてゆくことになる。しかし、財政健全化の努力を怠ったまま金融抑圧政策に依存する危険性は指摘するまでもない。わが国がギリシャのように金融市場の信頼を失わない政策が急務である。アベノミクス三本の矢といいながら金融政策にばかり依存しているが、肝心の成長戦略の実行力が問われている。
欧州政治の混乱やウクライナ問題、中国経済の減速など世界の金融市場を震撼させるような問題が山積して、今後の見通しに不透明感が増してきている。また、リーマンショックの原因になったサブプライムローン問題から8年が経過。金融緩和により市場に供給された莫大な資金が、いつか出口に向かうことは間違いなく、市場混乱への備えが重要だ。
さらに日銀とGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)によるPKO(株価安定策)も目先の効果があっても長続きはしない。NISAの投資枠拡大や子ども版NISAの新設など投資拡大の基盤整備が進んでいるが、根拠のない熱狂や強気予測に惑わされず、堅実なマネープランを確立して、「いつかは必ず起きるバブル崩壊」や「懸念される国債価格の暴落と財政破綻」に目配りしておく必要があるだろう。
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