【意味】
禍は口から出て、病は口から入る。
【解説】
口には、言葉を外に発する機能と食物を内に取り込む機能の2つがあり、
誰もが大変お世話になっている身体機関の一部です。
このように大切な身体の機関でありながら、有り難さよりも「口は災いのもと」に代表されるように、
古来口害に関する戒めの言葉が圧倒的に多いのも特徴です。
口への有り難さに言及する名言が少ないのは残念ですが、
人類の感謝下手がこのようなところにも表れているのではと思います。
江戸時代の仮名草子作者の如儡子(にょらいし)に『可笑記(かしょうき)』という書物があります。
彼はその中で「人の口は、一切善悪の出入りする門戸也」 と述べ、次のような分析をしています。
(1)口から出る善悪は、金言や詩歌を善とし、噂や嘘を悪とする。
(2)口から入る善悪は、薬や空腹時の食物を善と し、暴飲過食を悪とする。
この分析からすれば、口に入る食べ物は直接身体に関係しますから、本能的に自衛策が講じられます。
下痢やおう吐などはその例です。また仮に悪い物を食べた としても自己責任の範囲ということになります。
一方、口から出る言葉は聞く相手が居りますから、失言に対する戒めが必要です。
しかし言葉の持つ長所を考えるならば、如儡子のいう「口から出る善」も大切にしたいものです。
前述のように失言の戒め名言が圧倒的に多いことを考えると、人間学を学ぶ我々自身が、積極的に格調高い
名言を学び世間に語り伝え、「口から出る善」の量を多くし、家族・職場・社会のレベルを向上させたいものです。
私は「100万人の心の緑化作戦」というボランティア運動を提唱していますが、
この運動を如儡子の言葉を借用して表現すれば、「生き方行動から出る善」運動ともいえます。
この作戦は、会員が年15回開催の「人間学読書会」で先人の名言の学び、自分流の「生き方ノート」を作成し、
朗顔喜動の日常生活を心掛け、積極的に周りの人々の生き方のお手本になろうというものです。
そしてこの種の会員が100万人になれば、国民120人に1人の割合で「生き方の見本人間」が育つわけです から、
日本の社会水準は飛躍的に向上します。
現代日本人は豊かさに慣れ、「他人には我は関せず」の傾向が生じています。
国民水準を高めるためには、国や役所に頼るだけでなく、各国民が自らの生活姿勢を正しくして、
お互いがお互いのお手本になり啓蒙をし合うのでなければ、達成することはできません。
家族5人の意識向上が家族の水準を向上させますから、全国民1億2千万人の意識が向上すれば国の水準も必ず向上します。
この講演をしていたら、某政治家が笑顔で「巌海先生、100年はかかりますね」と。
小生答えて曰く
「我が国の並みの国会議員は任期4年、人間学の並みの聖 人君子は9族(9代×25年=225年)を親しむといいます。
大聖人の孔子・釈迦・ソクラテスは10倍の2500年も人民教化を説き続けています。
仮に 「100万人の心の緑化作戦」が国民運動として軌道に乗ったとしても、実現は1000年後の西暦3000年です。
こういう事業を「お墓の中から眺める 1000年事業」といいますが、○○先生のような大政治家に相応しい大事業です」と。
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禍は口より出で、病は口より入る。
杉山巌海