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人間学・古典

第126講 「論語その26」
過ちは、改むるに憚ること莫れ。

先人の名句名言の教え 東洋思想に学ぶ経営学


【意味】
過ちを起こしたことに気付いたなら、体裁や対面に囚われず、ためらわずに改めなさい。



【解説】
 米国のケネディ元大統領は、「最も尊敬する日本人とは?」という問いに対し「上杉鷹山」と答えたそうです。ケネディは、内村鑑三の『日本及び日本人』の英訳版から、鷹山の政治姿勢を学んだようです。
 上杉鷹山は、米沢藩主として倹約と産業により藩財政を再建した人物です。儒学者細井平州から教えを受け、この「改むるに憚ること莫れ」を口癖にして、孔子の唱える理想の徳治政治を築きました。
 2500年前の春秋戦国時代に生まれた孔子思想が、日本の江戸時代に徳治政治として実現され、更に近代世界をリードする米国大統領が理想の政治理念として憧れるということは、本物の思想が時代と国を超えて受け継がれたということになります。
 これこそ人類の文化思想の「承・活・伝」の素晴らしさです。宝石は天地自然界が産み出す高価なものですが、思想名言も人類文化が産み出した「宝石のような言葉」です。前者は貴婦人に似合いますが、後者は学びの実践ができる者なれば貧富を問いません。
 余談ですが、筆者は、周りを威圧するような時計・車・財布などは一切持ちません。できうるならば人間学で学んだ名言宝石を身に付けたいとの思いから、これらの豪華物には興味が湧かないのです。有り難いことに無駄遣いの出費も少なくて済みます。

 ケネディと云えば、後の総理大臣:佐藤栄作(在任期間1964.11~1972.7)との間に有名なエピソードがあります。
 時は1962年10月、米国がキューバ危機で大変な緊張に包まれる中、佐藤栄作はケネディ大統領との会談に向けて渡米しました。沖縄返還に向けての下交渉です。しかし、核戦争の危機迫る大変な時期に訪れた当時無役の佐藤に対し、ケネディは取り付く島も与えず、会談はわずか数分で打ち切られてしまいました。
 その時佐藤は、次の言葉をもって事態を一変させました。
 「大統領! シュヴァイツェルは、戦いで勝った国は負けた国に対して、服喪の礼儀をもって対応しなければならないと云っています」と(シュヴァイツェルとはドイツの哲学者・医者であるアルベルト・シュヴァイツァーのこと)。
 この言葉は老子の「戦勝は喪礼を以て、之に処る」からのものです。佐藤は事前に、ケネディの尊敬する人物がシュヴァイツァー博士であり、その博士がタオリスト(老子信者)であることを調査していたのです。
 この事例は、老子の名言と佐藤の交渉術に注目されがちですが、ケネディもまた尊敬する上杉鷹山の「改むるに憚ること莫れ」の教えを忠実に守ったとも云えます。いずれにしても凄いレベルの4人(上杉鷹山・シュヴァイツァー・ケネディ・佐藤栄作)です。

 鷹山の『伝国の辞』には次のように述べられ、時代背景を考慮すれば実に新鮮です。
1.国家は祖先より子孫へ伝える国家にして、我に私する物には之なく候
2.人民は国家に属したる人民にして、我私すべき物には之なく候
3.国家人民の為に立てたる君にて、君の為に立てたる国家人民には之なく候

 

杉山巌海

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