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第20話 日本にはきっと「愛南」がいくつもある

北村森の「今月のヒット商品」

百貨店でよく催される「北海道フェア」を楽しみにしている方も多いでしょうね。「京都フェア」も人気ですし、「沖縄フェア」もしばしば目にします。
 
では、これはどうでしょうか。
「愛南フェア」。
 
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あいなん、と呼びます。都道府県の名ではありませんね。その場所は……四国・愛媛県の最南西端にある静かな町です。鉄道が通っていないこともあって、東京から行こうとすると、半日以上は優にかかってしまうという地。
 
そんな辺鄙なところにある町の名を冠したフェア、実際にこの春、催されるそうですよ。東京や横浜の百貨店が予定しているようです。
 
もちろん、北海道、京都、沖縄などのように1フロアまるまる割いて、という話では当然ないでしょうが、それでも、一般にはあまり知られていない「愛南」のフェアが計画されているというのは、面白くないですか。
 
でも、なんでわざわざ、愛南が?
 
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魚介の質が、もうべらぼうなんです。
 
宇和海と太平洋というふたつの漁場を有しているのも特徴ですが、それぞれの季節に揚がる魚介がとにかく、ことごとく旨い。
 
上の写真は、天然物のスマという魚。味はあっさりめで、マグロとカツオの間のような、といったふうに表現すれば、少しは伝わるでしょうか。サバは身がピンと立っていて清々しい味わいすら感じられますし、タイもまたいい。
 
また、ゴールデンウイークになると、旬のカツオを食べるために、県外ナンバーのクルマが愛南めがけて集結するほどらしい。漁協の人に聞いたら「むっちむちの身は、よそでは体感できないと思います」という。
 
尋ねてみると、ただ単にとびきりの魚介が獲れるだけでなく、漁師さんも漁協の人たちも、獲った魚の手当てから、セリに早くかけるための工夫まで、相当に知恵を絞っているらしい。カツオなど、旬の時季には夕方近くまでセリをおこなって、すぐさま出荷するといいます。
 
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この愛南、すごいなあと思ったのは、天然魚だけではありませんでした。養殖魚もいい。
 
先ほどお伝えしたスマは、養殖も展開しています。天然のスマに比べて養殖のほうは、身がねっとりしているのが特色と感じました。
 
私、愛南のことに興味を持ったきっかけは、愛媛の県庁所在地である松山の割烹で食べた魚介がどれも上等で、親方に確認したら、そのすべてが愛南産だったんです。なんだ!この愛南は! と驚きました。
 
で、その夜に口にしたなかで、とりわけびっくりしたのが、上の写真の一皿でした。これ、アコヤ貝の貝柱をバター炒めにしたものです。ビールがぐいぐいと進みますよ。旨みがぎゅっと凝縮されている感じ。漁協の人は「漁業関係者である私たちですら、これはお金を支払ってでも食べたくなる」ほどなのだそうです。
 
愛南では真珠の生産も盛んで、アコヤ貝の貝柱は、言ってみればその副産物だそうですが、初冬から1月ごろまで、漁協に持ち込まれるそうです。
 
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それほどの魚介類を揃える愛南なのに、全国的にはまださほど知られていないのは、ひとつは四国、それも愛媛県内でほとんどの魚介が消費されてしまうからかもしれませんね。愛南の漁港はそんなに大きな規模ではないですから。
 
でも、養殖魚に関しては、可能性があるでしょうね。生産量を増やすことが可能ですから。聞けば「愛南フェア」でも養殖ものを中心に構成するらしい。美しい海域ではぐくまれているだけに、これが成功すれば、養殖魚への固定観念が覆されるのではないか、とも思うほどです。
 
今回、何を申し上げたかったか……。
 
愛南のような、まだまだ知名度は低いけれども実力を湛えている地域って、たくさんあると感じるのです。つまり、愛南的な存在は、きっとひとつだけはない。その実力とは、魚介のような一次産品の話だとは限りませんね。工芸品かもしれないし、工業製品かもしれません。
 
愛南はクチコミで徐々に存在感を高めつつあります。それは自然の恵みに加え、関係者が努力を怠らなかったからに他ならない、と私は考えます。そうした努力に対して、現に、大都市圏の百貨店バイヤーが光を当てたということです。

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