税金の納付ができなくなり、滞納処分となって、役所の納付条件を満たせない場合、余力のない所有不動産に対しても平然と差押えがされます。 国税徴収法第48条に「超過差押及び無益な差押の禁止」(注1)という条文がありますが、それを根拠に役所に異議申立をしても、高松高裁の判例を明示して却下されるだけです。私自身も異議申立をしたことがありましたが、やはりだめでした。ちなみに下記が役所から届いた却下の書面です。
では、この差押えの法的根拠はどこにあるかというと下記になります。
国税徴収法 第四十七条
地方税法第三百三十一条 条文でわかるように国税、地方税でも督促状を発送して10日を経過をしたら財産を差押えなければならないと記載されています。 ただし、じっさいには督促状が何回もきて、その間に役所の担当者が財産調査を行い、不動産の差押えが行われるのが一般的です。滞納後に役所に何度も足を運び、納付をしていても役所側の要望と折り合わない場合などは平然と差押えが行われることも多いのです。 差押えられる資産でもっともい多いのは不動産ですが、銀行預金、売掛金、保証金といったものも実際に差押えられるので注意が必要です。 もちろん税金の滞納をしないのが一番いいのですが、滞納してしまい役所側の要望通りには納付できない場合など、事前に、役所がどのように資産を調べ何をしてくるのか気になるところです。 まず、一番差押え対象になりやすい不動産を役所側はどう調べるのかですが、固定資産税の滞納なら、その明細で所有不動産がわかるので早い時期に差押えをしてきます。 法人で地方税の滞納者なら、法人代表者の聞き取り調査から法人所有不動産をわりだして差押えしてくるのですが、法人代表者が回答をしなくても、地方自治体の担当者は、税務署に行きその会社の決算書を閲覧し、資産科目に何があるか、それは具体的に何か? を内訳書で確認し差押えしてきます。たとえば、工場や店舗などの不動産であれば減価償却資産の明細書から所有不動産をわりだして、不動産登記簿謄本を取得して差押えをするのです。 決算書を閲覧されるとどんな資産をもっているか一網打尽にわかってしまいます。たとえば資産科目に多額の預金があり、預金の内訳書を見るとその銀行名と支店が書かれているので、それをもとに銀行に照会状を出し、預金の現状を確認します。そこで狙いをつけた場合、銀行の支店などに出向き、預金の動きを確認し、一番預金残高が多くなる日めがけて差押えをしてくるわけです。その預金が当座預金でその日または翌日が支払手形の決済日などの場合、不渡り事故をおこし、銀行取引停止処分を経て倒産に至ることもあります。 資産科目に多額の保証金がある場合、たとえば、店舗を借りているパチンコ店などはその保証金を差押えられ営業できなくなることもあります。 地方自治体の場合、決算書という情報の山を確認するには滞納している会社の管轄税務署での確認が必要になるのですが、国税の場合は、その情報そのものをもっているため即座に調べることができます。 このように役所の情報取得能力というのはフルに使われた場合すさまじいものがあります。しかも、滞納者が個人の場合、破産しても税金は免責されません(実際には納税猶予制度などがありますが)。それゆえに知識として税金滞納時の資産調査とその後の動き、どうしたらいいのかについてあらかじめ知っていたほうのがいいかと思います。
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*注1 国税徴収法第48条 参照:E-GOV国税徴収法 *注2 国税徴収法 第47条 参照:E-GOV国税徴収法 *注3 地方税法第331条 参照:E-GOV地方税法 |