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第27回 フィルターバブル

社長のメシの種 4.0

 総務省の平成30年版「情報通信白書」によると、2017年のスマートフォン個人普及率は60.9%、モバイル端末全体(携帯電話・PHS及びスマートフォン)は84.0%となっているが、世界的に今の世の中はスマートフォンが普及して、何でも簡単にインターネット検索で調べられる時代となっている。
 
 しかし、Googleなどのネット検索は、調べている人のこれまでの検索傾向や地域、年齢、思考などを参考に有害情報を出さない、志向に合った情報を出すために、検索結果にフィルターをかけ、有益と思われるもののみを表示している。
 そのため、我々が通常目にしている検索結果は自分の好みにあった情報のみが出るため、ランチやスイーツのお店やスニーカーや洋服を調べるなどには適しているが、幅広い情報やニュースを得る目的でネット検索をした場合には、偏った情報しか得られない可能性がある。
 
 この状況はフィルターバブル(filter bubble)」と呼ばれる、自分の好みの心地よい情報の泡(バブル)の中に閉じ込められているもので、世の中全体が自分の好みの世界だと錯覚して社会から孤立し、過激思想に走ってテロ行為を行う事例も起こっている。
 
 今年3月15日、ニュージーランド・クライストチャーチで起きた50人が死亡した2つのモスク(イスラム教礼拝所)での無差別テロの犯行声明が、「インターネット以外の場所で真実は見つけられない」というものだったことから、改めて「フィルターバブル」が問題視されるようになった。
 
 この傾向はネット検索だけでなくSNSでも同様で、自分と同じ思考の人たちとのみコミュニケーションすることで心地よい同意見のみがこだまのように返ってくる「エコーチャンバー(Echo chamber)」現象が繰り返され、自分の意見が増幅・強化されるという状況が生まれている。
 
 趣味の情報ならこのような状況に陥っても構わないが、経営者が自社の製品やサービスを考える時や、今後の経済状況やマーケティングで調べる場合には有害で、経営戦略を見誤る原因にもなり得る。
 
 ネット情報に囲まれ、ネット情報で人々が行動する現在の世の中だが、経営者は自分が「フィルターバブル」の中に閉じ込められ「エコーチャンバー」にさらされているという自覚を持って、広く世の中を見る努力を怠らないことが重要になっている。

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