よく、『お客様の声は神の声』とか言われますが、日々クレーム対応に追われている担当者にとって、
そんなコピーはきれいごとでしかないと思えてならないのが本音だと思います。
消費者の思い込み、錯覚、無知、身勝手、特別扱いを求める声ばかりが担当者を悩ませているのが
実感だと思いますが、これらの声の中に、企業にヒット商品を誕生させ、経営の永続的な繁栄を
図ってくれる、磨けば光る宝石の原石がまぎれていることも事実なのです。
そして、まぎれている原石を見つけ出し、そして磨き上げ、さらに売却できる力をもっていることが
未来に生き残れる企業か否かの物差しになると言っても過言ではありません。
次のヒット商品や新商品の誕生は、開発者のひらめきに頼る時代ではありません。
製品やサービスが飽和の時代の中で、自社独自でヒットのポイントがひらめく機会は微少です。
加えて開発者の稀有な感性と、膨大な投資力が必要です。企業としてはそれらの活動も
粛々と進めていかなければならないことも否定はできませんが、もっと合理的に結果の出る方法が、
消費者の声の中から、今後企業運営を支えてくれる宝石の原石を見つけ出すことなのです。
『**という商品をもっと**にしてほしい。』という声のとおりのすれば、
必ず購入されるわけですから、膨大な時間と資金と知力を投じた新商品よりも、
売上に貢献することが確実なのです。
ということで、主だった企業は、消費者の声をしっかりと集積し、分析し、解析し、結局取り組むべきか、
取り組まざるべきか、なにから取り組むべきか、どの程度取り組むべきかの取り組み度合いを測り、そして、
取り組むべきはさっさと取り組むということに力点を置いてきています。お客様相談室はそのためのもっとも始めの
役割を担っている部門であるという考え方が高まってきています。
その作業手順の中から、ヒット商品や新商品が誕生した企業も実は少なくありません。
つまり、お客様の声の中から、価値のあるものを選ぶのも企業能力、そして、選び出した声を、
市場にウケるように磨くのも企業能力、さらにその結果、誕生した商品を市場で売りまくるPR力や、
販売力を発揮するのも企業能力ですから、お客様の声のいくつかが神の声になるかならないかは
企業の新しい能力しだいなのです。
ちなみに、お客様の声がすべて神の声だとか、クレームは宝の山だとかという考え方はまちがい。
あくまでも、『そのうちのいくつかは。』という理解が正しいでしょう。
中村友妃子