ベルクは埼玉県を地場とする食品スーパーである。埼玉の食品スーパーと言えば、食品スーパー業界の雄とも言えるヤオコーが知られているが、同社はそのヤオコーとほぼ同じ地盤でありながら、ヤオコーと日本の1、2位を争うスーパーである。直近14年間の両社の営業利益推移を比較すると、利益規模は若干同社が下回るものの、両社とも食品スーパー内では突出してコンスタントに高い利益成長を遂げている。むしろ、ヤオコー/ベルクの推移を見ると、同社の方が優っているほどである。直近は若干ヤオコーが挽回しているように見えるが、これはヤオコーがM&Aを行ったためで、その分を除けばこの2年間の両社の位置関係はほぼ変わっていない。
小売業にとって重要な指標である既存店の前年同月比推移を見ても、同社の優位性は明らかである。図はこの3年ほどの同社及びヤオコーの既存店前年同月比推移を比較したものである。両社とも業界平均である日本スーパーマーケット協会の値を常に上回っているが、同社はヤオコーと同等、もしくは上回って推移していることがわかる。
同社の高い売上成長、利益成長の背景には、徹底的なチェーンストアとしての生産性の追求姿勢がある。店舗設備、什器備品の標準化を徹底することで、オペレーションの単純化を図って、無理なく運営できる体制ができていることがある。その結果、人件費を「作業量と時間」で管理し、そこから捻出した人時で、商品の付加価値を高めることやイベントの充実を図り、消費者の満足度を高めることができているということである。
その結果として、従業員一人当たりの売上高は、同業他社平均の1.3倍の生産性を実現している。
有賀の眼
一見すると、なかなか差別化が難しそうな食品スーパーであるが、生産性の向上を徹底することで、顧客の満足度を高められる商品やサービスが提供できることになるというわけである。もちろん、同じ地域で日本の1位と2位の食品スーパーが隣り合っているわけであり、品ぞろえの特徴としては明らかな差別化が成し遂げられている。それは、ヤオコーがやや高級志向であるのに対して、同社がサービスを犠牲にしない範囲での低価格志向にあるという点は両社の大きな違いである。
ただし、できそうでできないのが、この効率を旨とする経営方針の徹底である。地道に、コツコツとやるべきことを積み上げることができているからこそ、長期的にコンスタントな利益成長が遂げられているというわけである。