同競争が激しく、また浮き沈みも激しい外食産業の中で、最長既存店プラス記録において、最近王将の記録を抜いた「まいどおおきに食堂」を運営するのがフジオフードシステムです。これは、同社のまいどおおきに食堂が2013年12月に35ヶ月連続プラスを達成し、王将フードサービスの34ヶ月(2007年8月から2010年5月)連続プラスの過去の記録を抜いたものです。もっとも対象企業は月次を公表している上場企業に限った話ではありますが。
まいどおおきに食堂の好調要因はトリドール(3397)の丸亀製麺同様、そのエンターテインメント性にあるのではないかと思われます。丸亀製麺の魅力のひとつは、店舗に製麺機を持ち込んで、製麺しているところをお客に見せるところです。これは、そばややうどんやでそばやうどんを打っているところを見せる店舗形態がありますが、それを製麺機に置き換えたものです。
しかも、丸亀製麺のうどんの価格は手打ち店舗の半分程度と、立ち食いうどん店とほぼ同価格の設定が顧客に受けたものです。作っているところを見せることによって、シズル感が出て、おいしそうな感じがします。しかし、実際はやり方によってむしろ冷凍の方が美味しいということもあるのですが、印象度合いはその場で作っている方が良いようです。
トリドールが破竹の勢いで店舗を拡大し始めた当時、大小様々な外食企業がトリドールの真似をして、製麺機を店舗に持ち込んだうどん店を開店しました。それに対して同社は業態をすっかり真似るのではなく、エンターテインメント性を参考にし、まいどおおきに食堂に精米機とかまどを持ち込んで、顧客の目につくところに設置しました。これが功を奏して2011年2月以降現時点まで35ヶ月間既存店プラスが続いています。
製麺機とかまど以外にも調理場をオープンキッチンにして、焼きたての焼き魚を提供するなどの工夫も行っています。これも、見えない調理場で調理しても、オープンキッチンで調理しても味に変わりはないはずですが、出来立て感では圧倒的に上回るものになります。
そのまいどおおきに食堂の最新フォーマットは「ライブアイランド食堂」タイプです。これはオープンキッチンをさらに進めて、真ん中にキッチンを持ってきて、その周りで料理を供給する形になります。よりシズル感を高めようという戦略と考えられます。
その結果、それまで半年間2-3%で推移していた既存店伸び率が、2013年終盤の直近3ヶ月では4-5%と水準を切り上げています。
このまいどおおきに食堂が同社の中心業態で、牽引役となっていることは間違いありませんが、さらにこのところは串家物語が新たな牽引役として台頭しています。
串家物語はバイキング方式の串揚げ店です。すでに串に刺してある具材をバイキング方式で選び、自分でテーブルにある油で揚げるという業態となります。最大のポイントは油にあります。通常であれば、油がテーブルにあると、水が入ったら油がはねて危険極まりないことになります。しかし、長い年月をかけて、製油メーカーと水が入ってもはねない油を開発して成り立っている業態です。
串に刺してある具材は無数にありますが、ほとんど調理らしきものは不要で、店舗運営コストも原価コストも十分に低水準と考えられます。また、具材も価格が上がれば別のものに変えることも難しくありませんから、コストコントロールも容易です。串揚げ90分食べ放題コースが2,625円で、飲み放題付きで4,000円ほどとなります。
串家物語はここ1、2年、ショッピングセンターでの出店が増え、休日等には家族連れで賑わっているようです。
まいどおおきに食堂と串家物語に牽引されて、同社の全業態の既存店も2011年6月以来、31ヶ月連続でプラスとなっています(図参照)。
2013年8月に既存店伸び率がジャンプアップしていますが、これは「串家物語」がTVのバラエティ番組で取り上げられ、2013年8月、9月に串家物語の既存店月次が急拡大したことにより、全業態でも高水準の伸びとなりました。
現在は、串家物語にはTV放映当時の勢いはありませんが、それ以前との比較では好調をキープする中、ここ2、3ヶ月はまいどおおきに食堂の既存店伸び率が加速してきました。それによって、全業態の伸び率も高水準をキープしていす。
《有賀の眼》
同社の見習うべき点は、常に工夫し続けることでしょう。しかし、工夫するといっても次々と画期的なアイディアが浮かんでくるというものでもありません。ときには同業他社の成功例を真似することもあります。しかし、丸亀製麺の製麺機の例を見てもわかるように、猿真似では新たな価値を生み出せません。完全に真似するのではなく、エッセンスを取り入れてオリジナルなモノに仕上げる工夫というものが重要なのでしょう。