松下電器(現・パナソニック)創業者の松下幸之助氏に、
次のようなエピソードがあった。
子会社の社長の人選をしたときの話。
人事部長が、4人の候補者の書類をもち、決裁を求めてきた。
氏は、経歴書にざっと目を通すと、迷わず、
「この男がエエ」
と、一人を選び出した。
出身大学など、経歴は決してピカイチではない。
人事部長は、適任者は他にもっといるだろうと思った。
そこで理由を訊いてみると、
「この経歴でここまでのぼってきたんや。
この男は運が強いやないか」
と氏は答え、
「会社もこの人の運をもらえばエエ・・」
と、続けた。
ある住宅機器メーカーでは入社試験にあたり、最終段階で社長面接を行う。
すると、社長は必ず、最後にこう尋ねるそうだ。
「あなたは、自分を運のいい方だと思っていますか? それとも・・・」
応募者がだいたい同じレベルなら、「運がいい」と答えた方を採るそうだ。
松下氏と同じように、『運のいい人を集めた方が、会社の運もよくなる』
と思っているのだ。
人間が成功に導かれるためには、いろいろな条件が必要だ。
だが、何といっても運が良くなければ、成功は難しい。
私も、そう考える一人である。
『運の良し悪しなんて生まれつき』と反論される方もいるだろう。
たしかに、I was born under a licky star.
(私は、幸運の星のもとに生まれついた)という言葉もある。
だが、幸運の星であるための条件など、あるようでない。
自分で幸運だと思えば、幸運になる。
そして、幸運だと思い続けると、本当に幸運の女神が近づいてくる…。
世の中は、こうした巡り合わせになっているのだ。
運がいい人とは、運が良いと思っている人だ。
そういう人とつき合うと、自分もそういう考え方になってくる。
それ以上に、運がいい人は運気を分かち与えてくれる。
また、どんな人にも、一生に何度かはラッキーチャンスが廻ってくる。
『いつまでもあると思うな、親とカネ』という言葉があるが、
この言葉には続きがある。
『無いと思うな、運と災難』 だ。
但し、運をつかむには、独特の反射神経が要求される。
日露戦争は、小犬が馬を倒したような戦争だといわれている。
勝敗の分岐点となったのは日本海海戦だ。
無敵といわれたバルチック艦隊を、日本艦隊が駆逐したのだ。
後に、日本艦隊の指揮官だった佐藤鉄太郎に、友人が勝利の理由を訊いた。
答は、
「六分どおり運でしょう」
「で、残りの四分は?」
と続けて訊く友人に佐藤は答えた。
「それも運です。」
最初の六分は本当の運。残りの四分は人の力で招いた運だった、というわけだ。
人生の成功をつかむには、人の力で運を招き寄せられるかどうかにかかっている。
そのカギのひとつが、運気をくれる人と付きあうことなのだ。