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- 第180回 『上司をリードできない人は、部下をリードできない』
ビジネスマンの幸せの80%は、直属の上司とのラポール(人間関係)で決まるという。
会社を選ぶことはできても、上司を選ぶことはまずできない。
イヤでも毎日顔を合わせざるを得ない。
しかも困ったことに、こちらの生殺与奪権まで握っている。
だから、上司とウマが合うかどうかで、
ビジネスマンとしての自分の幸せ度合いは定まってしまう。
リーダーシップとは、とかく部下に向けられるものと考えがちだが、
実際は、自分の仕事、同僚、会社、それに上司に対しても発揮すべきものである。
「部下をリードできる人は、その前に、上司をリードできる人でなければならない」
ということだ。
上司を効果的にリードするための原則は、
「部下とは、上司が職務の使命や目標の達成を助けるための補完的機能の提供者」
と考えたうえで、上司と良好なラポールを作り上げることである。
その上で、心得ておくべきことがいくつかある。
私の長年の「部下経験」から学んだ教訓である。
(1)
何よりも肝心なのは、
《上司に完全や完璧を求めない》ということである。
上司といってもたかが数年の経験の差しかない普通の人間だ。
「賢者は愚者に学び、愚者は賢者に学ばず」で、
決して完全ではない上司に対して美点凝視の気持ちで接し、
良い点を学ぶというマインドセットを持つことが先決である。
(2)
良好なラポールを作るためには、
上司に対して《八褒め二直言》のバランスで接することである。
よほど自分を厳しく律する人でも、褒め言葉には弱い。
8割ほどは上司の耳に響きのよい言葉、それも口先だけの追従ではなく、
実態と誠意を伴った褒め言葉でラポールをつくった上で、
直言や異論、異見を唱えることである。
ラポールは聴く耳をつくり、直言は付加価値をつくる。
上司の仕事に付加価値を提供しない部下は、単なるメッセンジャーにすぎない。
(3)
反論を唱えるときの約束事がいくつかある。
《反論は2回まで。必ず代替案を伴って。決定には潔く従う》の以上3点。
2度まで反対しても決定が下ったときには潔く従うべきだ。
反対するだけで代替案の無い反論や批判は、単なる不満分子の烙印を招く。
(4)
仕事の結果や成果に対する花は、上司に持たせるという姿勢が望ましい。
よほど器の大きい上司か、神経が鈍な上司でない限り、部下に対して、
「ひょっとすると自分の身を脅かすかもしれない…」という潜在的脅威感を抱いている。
花を持たせることで、「こいつは自分の見方だ」という
安心感と信頼感を持たせることである。
・・・と、ここまで書いてきてハタと気づくことがある。
上司を上手にリードする原則として述べた上記の(1)~(4)までの中で、
(3)の一部を除けば、すべてが部下を効果的にリードするための原則と見事に重なっている。
「部下をリードできる人は、その前に、上司をリードできる人でなければならない」
という言葉の重さが、改めて納得できる。