景気は多少の回復の兆しがあると報道では言われているようですが、私の実感とは合いません。売れ行きの回復は不十分であるし、加えて価格の下落も止まっていないと思うからです。
●もう年の瀬が始まっています。本当に早いですね。
そういう情況なので、最近実行された改善の中で、このマガジンを通じた改善仲間で共有したいと思われるものを、これからいくつかご紹介したいと思います。
というのも、世の中がどんなに厳しくなっても、それに負けないすごい改善を実行して、なるほど、「ピンチはチャンス」とはよく言ったものだと、みんなで喜び合いたいと思うからです。
《事例その1》
食品製造業のY社には複数の工場があるのですが、定期的に全工場の代表が参加して、改善の合同発表会を行います。
発表会を行う会場は各工場で持ち回りなのですが、発表会の後、参加者全員で、そこでの工場見学会を実施します。
その時、見学会参加者全員に「工場勉強会おみやげ記入シート」が配られます。このシートはご覧の通り二つの記入項目があります。(図1)
●図1:工場勉強会おみやげ記入シート
ひとつは「おみやげ」、もうひとつは「お買い上げ」です。ネーミングもユニークで楽しいですね。
意味はシートに分かりやすく書いてありますが、「おみやげ」は「このままではまずい点と、どのように改善すれば良いかを記入」とあるとおり、その工場に対するアドバイスを記入します。
参加者全員が自分の工場で改善のリーダーシップを取っている方ばかりですから、いつもとは別の工場を見ることに岡目八目的な見方もできて、アドバイスが出やすくなることもあるようです。
また、自分たちが既に実行した改善が頭に入っているので、その違いが分かることも指摘項目発見の対象になるようです。
「お買い上げ」は、「自分の工場に取り入れたい点」とありますが、見学している間に見つけて自分の工場に帰ったらすぐにマネして実行するというものを書いてもらいます。
「この改善は素晴らしいので、帰ったらさっそくマネさせて頂きます」という宣言ですから、その工場の改善を評価するという形になります。
そして、このシートに記入することは強制です。なるべく書いてくださいではなく、絶対に記入することが求められています。ですから、見学者は当然のように目を皿のようにして、工場の改善やモノづくりのプロセスを見てくれます。
これまでに何回も申し上げましたが、情報の共有化とか助け合いとかはとても大切なことではありますが、ではどうすればそれが実行できるのかというと、けっこう難しいのです。
しかし、このような現場・現物を通じての作業をすると、これがかなりのレベルで実行することができます。
工場には改善のネタがたくさんあります。ところが、いつも見ていると慣れが生じてしまい、見逃してしまうことがよくあるのですが、このような方法を取ることによって、そのようなもったいない見逃しを避けることが出来そうですね。
どうぞお買い上げをよろしくお願いします。
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