3.だったらうちが【こんな風に】役に立てますよ
次のフェーズでは、挙げた悩みに対して、自社が役に立てることを記載していきます。
優先順位の高いものから順番に、自社が役に立てることを、記載していきましょう。自社では解決できないものもあるでしょうね。それで構わないのです。
ただし、できるだけ柔軟に考えていきましょう。もう少し具体的に言うと、多少こじつけでも構わないということです。たとえば、前述の工場用の部品棚の会社なら、「品質にバラツキが多くなっている」という悩みに対して、
『当社の部品棚を使うと工場を整理整頓することができる。整理整頓された工場で作業をすることによって、品質が安定する(かもしれない)』
というように、風が吹けば桶屋が儲かる式に多少強引にでも、自社が解決できると言ってみる、ということです。頭の体操だと思って考えてみてくださいね。
4.ホント?って思うでしょ、裏づけはね・・・
いよいよ出展コンセプト検討シート、最後のフェーズです。人は、「うちならこんな風に役に立てますよ」と言われると、反射的に身構えるようにできています。身構えて心の中でこう思うのです。
「ホントかなぁ?売りたいから言ってるだけなんじゃないかなぁ」
この疑問を払拭するための情報を挙げていきます。商材の性能やスペック、実績や事例、顧客の声などがこの欄に入ることになるはずです。
全体を通して、出展コンセプト検討シートを埋めていく際に、重要なことが2点あります。それは、あれもこれもと欲張りすぎないことです。わたしは、展示会営業Ⓡコンサルタントとして、さまざまな企業にお伺いしていると、
・うちの商材にはさまざまなものがある。すべて来場者に見てもらおう
・うちの顧客は製造業から小売業まで多岐にわたる。すべてのお客様に来てもらおう
・とにかくたくさん商品を展示しよう。だって展示会でしょ
とおっしゃる方が非常に多いのです。
でも、それでは成果がでません。なぜなら、このような意見を反映してつくられたブースは総花的なよくわからないものになってしまうからです。
自社のブースしかないのであれば、それでもよいのですが、展示会場にはたくさんのブースがあります。よくわからないブースは、スルーされてしまうのです。
「何のブースかよくわからなければ、その謎を解き明かそうとして立ち寄ってくれるんじゃないだろうか?」
このように言う方がおられます。でも、そんなことはありません。断言します。こう考えるのは、出展社側の幻想です。来場者はよくわからないブースに立ち寄りません。あなたも総花的にならないように注意してください。
では、どうすればよいのでしょうか?それは、
『1ブース=1アイテム=1ターゲット』
を心がけることです。あれも、これも、それもと欲張るのではなく、絞り込むという発想を持ちましょう。ターゲットや商材を絞り込むのは、何か大事なものを切り捨てるようで苦しい気持ちになるかもしれません。
でも、本当に事業領域を絞り込むわけではありません。展示会での見せ方を絞り込むだけですので、気楽に取り組みましょう。
一点補足しておきます。それは、「1アイテム」を、「たったひとつの商品」と、必ずしも文字通りの純粋な意味でとらえる必要はないということです。商品Aと商品Bを組み合わせて提供する方が、「1ターゲット」で設定した相手にとって価値が高まるのなら、A商品とB商品を合わせて「1アイテム」と考えても構いません。
その意味では、「1アイテム」は「1ソリューション」と言い換えた方がよいケースもあるでしょうね。
それよりも、もっとも重要なのは「1ターゲット」です。ここをきちんと設定すること展示会での成果を決定づけると言っても過言ではありません。そして、この「1ターゲット」というのは、出展コンセプト検討シートの「1.展示会で出会いたい相手は?」と同じなのです。
おわかりでしょうか?出展コンセプト検討シートを埋めていくことで、自然と、『1ブース=1アイテム=1ターゲット』になっていくのです。その意味でも、出展コンセプト検討シートをしっかり埋めていきましょう。
もうひとつ重要なことがあります。それは、この出展コンセプト検討シートを埋めていく作業は、営業部、マーケティング部、設計開発部、製造部、総務経理部など各部門の人が集まった、社長がプロジェクトオーナーのプロジェクトチームで議論しながらつくりあげていくという点です。
プロジェクトチーム全員で考えて決めていくから、出展コンセプトに対する納得と愛着が生まれ、展示会当日やその後のフォローの動きにも、全部門が主体的にかかわっていくようになります。
さらに、出展コンセプトを検討していく中で、自社がなぜ顧客に選ばれているのか?、ライバルと異なる自社の強みはどこなのか?、を真剣に考えることになります。製造部や総務部など日ごろ顧客と接しない人たちも、顧客のことを真剣に考えるでしょうし、これまでは、売ることしか考えていなかった営業部門も、製造部が議論に入ってくることによって、「つくる」ということを意識します。この経験は、下手な研修よりもよほど、教育効果があります。
あなたの会社も、出展コンセプト検討シートはだれかひとりが考えるのではなく、プロジェクトチーム全員で考えるということを徹底してほしいと思います。
次回は、「出展コンセプト」の具体例について、実在の企業さんを例にお伝えします。ご期待ください。
※展示会・イベントの日程は変更することがあります。公式サイトから確認をお願いします。

清永 健一(きよなが けんいち)
株式会社展示会営業マーケティング 代表取締役
展示会営業Ⓡコンサルタント。中小企業診断士。奈良生まれ、東京在住。神戸大学経営学部卒業後、メガバンク系コンサルティング会社など複数の企業で手腕を発揮し、2015年に独立、株式会社展示会営業マーケティングを創業する。展示会のプロフェッショナルとして、展示会主催者や出展企業などにそのノウハウを伝えている。著書の「飛び込みなしで新規顧客がドンドン押し寄せる展示会営業術」「中小企業のDX営業マニュアル~オンライン展示会をきっかけとした営業改革術」(ともにごま書房新社)、「仕事のゲーム化でやる気モードに変える」、「営業のゲーム化で業績を上げる」(ともに実務教育出版)はいずれもamazon部門1位を獲得。行政、公益法人、金融機関、各地の商工会議所など講演実績多数。 ホームページ:https://tenjikaieigyo.com/
ビジネス見聞録WEB4月号 目次
・p1 収録の現場から 〈妹尾輝男「実践エグゼクティブ・コーチング」音声講座〉
・p2 講師インタビュー【増収・増益・増“元気”!数字を社長の武器にする経営】田中靖浩
・p3 今月のビジネスキーワード「人的資本経営」
・p4 令和女子の消費とトレンド「ベストセラーが生まれる理由とは? ヒットの裏にある『人を動かす隠れたホンネ』」
・p5 展示会の見せ方・次の見どころ
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