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人間学・古典

第50講 「言志四録その50」
心を得るものに至りては、口言う能わず。

先人の名句名言の教え 東洋思想に学ぶ経営学

【意味】
言葉の領域を超えて心で自考自得したことは、口頭では説明できない。


【解説】

唐の名僧寒山禅師の言葉に「冷暖は我自ら量る、奴の唇皮(しんび)を信ぜず」とあります。冷たい熱いは自らの体で感じ、他人の口先の説明などはあてにしないという禅僧らしい心意気です。
    
私も坐禅を初めて36年になります。若い時にはかなりの意気込みで取り組みましたが、最近では日常坐禅となっています。昨日で800日連続の坐禅を継続中ですが、小悟らしき体験は何回かありましたが、禅僧の皆さんのような大悟徹底からは遥かに遠い心境で坐禅を繰り返しています。
禅宗には「不立文字(ふりゅうもんじ)」という言葉があります。文字や言葉では表現できないものがあるという意味です。小悟の領域を若い人たちに伝えようとしても、肝心のところは言葉では伝え切れない部分が残ります。
ところが学園の教職員の中にハードな毎早朝のランニングをこなし、100キロマラソンなどに挑戦する少し変わった人物がおります。この人物にはかつて「般若心経をももの筋肉で唱えながら、早朝ランニングをするとよいですよ」とアドバイスをしたことがあります。
この教職員との会話では、言葉で伝えられない小悟の領域が伝わるような感覚を持つことがしばしばです。彼の場合は既に小悟を遥かに超えて中悟の領域に達していますから、こちらの小悟に共感してくれるのかもしれません。いずれにしても職場に不立文字の世界での会話が成り立つ同僚がいるということは、大変痛快で嬉しいことです。


このようなこともありました。
ある時、講義が上手いと自負していた若い先生が、教壇の上で説明に行き詰まってしまいました。必死で説明を取り繕おうとする先生に、何人かの学生がその先生の間違いを指摘し、今まで眠っていた学生までが活発に意見を述べ出しました。
先生は準備不足を恥じ入りながらも、今までにない学生たちの活気を感じました。説明だけでは入り込めない聞き手の領域を「自考自得の領域」といいますが、この領域を刺激したからこそ、クラスの学生たちに活気が生まれたのです。


日常生活にも「自考自得の時間」が大切です。この時間が不足すると醸成不足のワインのように味わいの薄い人間になります。こせこせして忙しい人や早口にまくしたてる人は、表面からの浅い部分のところだけで滑っているような感じがあります。どんなに忙しくても、どこかにゆっくりした部分がなければ本物ではありません。
「何でもゆっくりやれたら一人前である」(巌海)


『言志四録』は50講を区切りとさせていただきます。
次回より『帝王学』と題し中国の貞観政要と宋名臣言行録を取り上げます。ご期待ください。

 

杉山巌海

第49講 「言志四録その49」 諌めを進むる者は、すべからく虚懐なるべし。前のページ

第51講 「帝王学その1」 民、路に落ちたるを拾わず、外戸を閉じず。次のページ

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