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人間学・古典

第108講 「論語その8」
君子重からざれば、威あらず

先人の名句名言の教え 東洋思想に学ぶ経営学


【意味】
上に立つ者は、どっしりと重々しくなければ威厳が生まれない。



【解説】
 上に立つ者の威厳とは、権威を振り回して部下に恐怖心を与えることではありません。総合的な指導能力を発揮して、部下をまとめその業績を挙げ、その結果信頼される上司として畏敬の念を持たれる・・・。このような総合力の人物を世間一般には「威厳のある人」といい、人間学では「人物器量の備わった人」と高く評価します。

 最近の社会は指導者の地位が軽くなり、ボーダーレス時代といわれます。地位や年齢に相応しい人間修行ができていないから、器量が小粒のままで威厳が薄れるのです。
 一般的に地位を得ると、書店に並ぶ部下操縦法などの啓発本を求め、テクニックで対応しようとします。しかし数人の部下ならばいざ知らず、次第に部下人数が数十人数百人と増えますと、掲句の説くような威厳がなければ部署は治まらず、折角地位を得て真面目に対応していても途中で失脚する羽目になります。
 それではどうしたら「上司の人物器量やその威厳」が備わるのでしょうか。
 この世の中に「自己器量の速成法」があるかと問われますと、筆者40年の人間学の研究からいえば「無し」となります。人物器量造りにおいて促成法は馴染まなく、生涯にわたる育成継続が要求されます。

 敢えて理屈をこねますが、人物器量の出来上がるまでには、次の四段階を要します。
 まず(1)(本人が)志を抱いて秘かに修行や勉強を重ね、(2)(本人が)その学びを日常生活に活用しますと、自然に立派な振る舞いが目立ってきます。(3)すると(周りの人々が)次第にその日常振る舞いを認め一目置くようになり、畏敬の念を抱きます。更に進みますと(4)(本人も)周りの評価から指導者の自覚が生まれますから、修行も進み益々立派な器量に成長します。
 留意することは、どんなに人物修行を積んでも③の衆人認知のレベルに到達できなければ、趣味の骨董集めを楽しむようなものです。筆者などはその典型の人物ですが、修行という耳触りの良い言葉に溺れて「修行マニアの人生」で終わる危険性もあります。それ故に絶えず「我命燃焼の方向(使命観)」を確認し、社会貢献を意識した器量造りが大切になります。

最後に「知識→見識→胆識→徳識」の"修行レベル4段階"を紹介します。
(1)知識とは、大脳皮質に記憶しただけのレベル。しかし知識は判断の基礎情報となるから大いに勉強し吸収する。
(2)見識とは、多くの知識情報の中から「かく在るべしという選択眼」が伴ったレベル。実行力が伴わないから評論家レベルの軽さも生じる。
(3)胆識とは、見識に度胸実行力が伴ったレベル。無理な実行をすれば反発の危険も生ずる。
(4)徳識とは、中心者の願いを周りの人々が以心伝心的に受け取り、いつの間にかに実現させてしまうレベル。「その身正かしければ、令せずとも行われる」(論語)の水準。マザーテレサの貧民救済事業などがこれにあたります。

 

杉山巌海

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