社長個人と会社のバランスを判断すべき指標が連結バランスシートだと気がついたのは突然のことでした。今思えば、当然のことといえば当然のことなのですが。
◆銀行が一番欲しい情報
それは、クライアントと一緒に取引銀行に交渉に行ったときのことです。
金融機関側は、オーナー社長個人と会社を一体と見ていることは、貸し手の立場からすれば当然なのですが、あまりに当たり前のことだったため、かえってなかなか気がつかなかったのかもしれません。
貸し手からすれば、借り手の返済能力が一番のポイントになるため、借り手側の会社の資産だけでなく社長個人の資産の担保提供を要求することがよくあります。そのため、貸し手側は、借り手側の資産の情報を常日頃から入手しています。
つまり、貸し手側は、会社の資産・負債のみならず、社長個人の資産・負債をも勘案して、返済能力を見ているのです。
中小企業の債務者区分においても、返済能力がない会社の場合、社長やその親族に預金などの個人資産が多額にあり、当該資産を会社に提供する意思が明確な場合には、金融機関がこれらを勘案することになっています。
なお、その際には、社長等個人に借入金や第三者に対する保証債務がないかなどについて確認することになっています。
要するに、会社と社長は一体として見られているということです
これはどういうことかといいますと、オーナー社長個人のバランスシートと会社のバランスシートを、完全ではありませんが、合算して見ていることになります。つまり中小企業版の連結バランスシートで判断しているのです。
通常、連結バランスシートといえば、上場している親会社とその子会社の連結を行う際に作成されますので、中小企業では、まず、作成されることはありません。
この中小企業版連結バランスシートこそが、個人と会社のバランスの取り方の唯一の指標となりえるのです。
◆いつ贅沢ができるか?
儲かって個人で贅沢をしたいと思っても、連結バランスシートが債務超過になりそうな状態であれば、会社と社長もろとも破綻する危険があるため、この時点ではまだ贅沢はできないと判断できます。
儲かっていることを表す会社の損益計算書だけでは判断できないのです。この点は、損益計算書だけで賃上げをしてはいけないことにも通じることです。
この中小企業版連結バランスシートの状態を見れば、例えば、いつ、いかほど、蓄財や贅沢をしていいかを判断することが可能になります。
なんだか、わくわくしてきませんか。
この点については次号などでじっくりお話します。
中小企業版連結バランスシートで、社長の資産と負債を合算することにより、いままで見えてこなかったオーナー会社の本質が見え、緊張感が芽生えてきます。
その意味でも、中小企業において、この連結バランスシートこそ本当の会計情報といえるのかもしれません。
この連結バランスシートの作成及び詳細は、拙著『会社と社長個人のバランスシートを合算する《連結バランスシート経営》で会社を強くする』日本経営合理化協会出版を参考にしてください。