其の二
強い会社は、バランスシートが良く、
その結果として収益や利益が上がっている
あなたの会社の資産は、お金になりますか。収益を生みますか。
お金にならない資産や収益をもたらさない資産が、れっきとした資産として計上されていて、それを前提に経営判断をしますと、流動比率が高いのになぜか苦しいことになります。
資産とは何かを改めて確認する必要があります。
会計上の資産の定義はここでは不問です。
経営上の資産の定義が大事です。
ここでは、「会社に収益をもたらすもの」「お金に代わるもの」が資産になります。
資産は皆そうなのではないのかと言われそうですが、それこそ、バランスシートをよく読んでいないことになります。
たとえば、現金や預金はいいとして、売掛金は当然、資産ですが、本当に全額、回収できますか。もしかして取引先が倒産寸前で回収できないのではないでしょうか。もしそうであればその未回収額は資産ではありません。
在庫は、棚卸資産として立派な資産ですが、本当に売れますか。販売-仕入=在庫ではなく、販売-仕入=スクラップという考えのもとでは、在庫はお金になりません。もし本当にそうであれば、この在庫も資産ではなくなります。
土地を所有している場合、バランスシートの金額は取得原価ではありませんか。つまり、購入した金額であり、売れる金額ではありません。
建物や車はどうでしょうか。土地と違い、減価償却をしているはずです。
1000万円で取得した建物があり、600万円の減価償却が終わったとしますと、帳簿では400万円が資産として計上されています。
では、400万円で売れますか。
この様に、単に、バランスシートの資産を見るのではなく、お金の源泉になっているかを確認しておくべきなのです。
事業の大転換を行う場合、単純に儲かるからという理由で行ってはいけません。大転換した場合の体力、つまり、お金の源泉の状態を計算しておかなければなりません。
そして、今、会社を清算したら、お金が残るのかも計算しておくべきなのです。
収益は、バランスシートから生まれます。この考えがすべてのベースになります。
インターネット関連の中には、バランスシートの資産が、現金預金、売掛金しかないところがあります。
これだけでは、収益はバランスシートから生まれることが理解できないこともあります。
この場合は、目に見えるバランスシートだけでなく、無形の資産を考えることが必要です。技術、ノウハウ、資格、特許、暖簾等々、バランスシートに計上されない無形の資産があれば、そこから収益が生まれることになります。
現実、目に見える資産の少ない中小企業の場合、目に見えない資産が何かが今後の勝負になります。
そして、収益はバランスシートから生まれるだけでなく、あとでお話ししますが、あらゆるものがバランスシートに支配されていることを再確認すべきです。
何によって売上をあげているのかでバランスシートは大きく異なります。
サービス業の場合、在庫というものがありませんので、なかなかバランスシートで判断することは難しくなります。
サービス業の典型でありますホテルでは、施設・設備という固定資産があります。
例えば、取得原価に対する減価償却累計額の割合で、設備がどれくらいの経過年数なのかを推測することができます。
この場合は、損益計算書の修繕費も見ることになります。定期修繕であれば、費用として計上されるからです。
大規模な改装をしますと固定資産の取得原価になりますから、何年間かバランスシートを比較すれば、建物の金額が増加していることと思います。
先ほどお話しましたようにインターネッビジネスの場合、資産が現金預金以外ゼロというところもあります。レンタルオフィスを使用していれば敷金や保証金もありませんので、バランスシートには計上されません。10万円以下のパソコンの取得費はすべて費用になります。
インターネットビジネスは、設備投資もあまりかからず、固定費も少ないため、大きな失敗はありません。
インターネットビジネスのバランスシートは、シンプルであればあるほど、身軽で、収益を計上しやすくなり、それが魔法のバランスシートになります。
しかし、困ったもので、資金的に余裕が出てきますと、本業以外に目が移ってしまい、バランスシートに、有価証券、貸付金、不動産等が計上されてきます。これが失敗の始まりになります。儲かる仕組みが異なるものに手を出したためです。
在庫商売は、突然、バランスシートが変化します。
資産には、商品はもちろん、売掛金、敷金、保証金等が計上されることになります。また、商品を購入し、販売する際の入金出金のタイミングが悪ければ、運転資金が不足し借入金がバランスシートに登場してきます。
この場合もバランスシートに収益を生む資産があるかどうかで判断します。
よく言われることですが、売れる商品がいい商品なのです。どんなに惚れ込んだ商品が目の前にあっても、売れなければ、ただのゴミの山になります。
そこで、まず、なぜ、昨日売上が上がったのかを考えることになります。毎日、売上が上がる業態でなければ、なぜ、先月、売上が上がったのかを考えます。
下請け業者の場合、単純に、受注が来たからでは答えにはなりません。なぜ、当社に受注が来たのかを考えることになります。
なぜ、売上が上がったのかの回答が、儲かる仕組みになります。
バランスシートの基盤の上に、明確な「儲かる仕組み」が存在して初めて強い会社になります。