華為5Gスマホ新機種発売
2023年、華為は通信機器分野では世界最大の市場シェアを維持する一方、クラウドコンピューティング、PC(パソコン)、OS(基本ソフト)システム、デジタルエネルギー、高性能半導体、スマート自動車などの分野でも躍進を遂げている。
その内、華為クラウドコンピューティングは19%の中国市場シェアで、アリババに次ぐ国内2位を占める。パソコン分野では、華為製ノートパソコンが389万台の出荷台数でレノボ―、HPに次ぐ国内市場3位、ipadは華為がアップルに次ぐ2位を確保。華為が独自に開発したOSの「鴻蒙」(英文名ハーモニーOS)は国内市場開拓に大きな進展があり、グーグルのアンドロイドOSと「決別」する自信を示している。華為半導体部門のハイシリコンは23年第4四半期の売上が前年比で240倍増の70億ドルに上り、世界4位を誇る。スマート自動車部門の収入も前年の2.3倍に相当する。
23年一番注目される華為の業績と言えば、やはり5Gスマホの新発売である。これは米政府による厳しい制裁を打破する画期的な出来事だ。
昨年8月、華為は予告なしに5Gスマホの新機種Mate 60 Proを発売した。Mate 60 Proは中国通信機器分野の最新技術を集約し、米国による華為制裁と封鎖を打ち破り、通信業界を驚かせた。発売すると、中国で絶大の人気を集め、華為ファンの人たちを熱狂させた。
新発売のMate 60 Proを分解・分析すれば、部品(件数)の約9割が中国製であることが分かる。「日本経済新聞」2023年11月14日朝刊記事によれば、3年前のMate 40 Proと比べれば、Mate 60 Proのサプライヤーの主な変化は次の4つである。
- メイン半導体 設計は華為の子会社・海思半導体(ハイシリコン)で前と変わらないが、委託製造先は台湾積体電路(TSMC)から中国の中芯国際集成電路(SMIC)に変わった。
- 有機ELディスプレイ サプライヤーは韓国のLGから中国の京東方科技集団(BOE)に変更した。
- タッチパネル関連 米国製から中国製に変わった。
- カメラのメインセンサー サプライヤーは日本のソニーから韓国のサムスンに変わった。
上記4項目のうち、高速通信規格「5G」に対応できるMate 60 Pro発売の決め手は、やはりメイン半導体サプライヤーの変更だ。
周知の通り、2020年発売Mate 40 Proのメイン半導体に使われた5ナノ世代チップはファーウェイ子会社の海思半導体(ハイシリコン)が設計したものの、生産は台湾のTSMCに委託した。しかし、米国の華為制裁強化によって、TSMCは華為に対し高速通信規格5Gに対応できる半導体の輸出が出来なくなった。そのため、華為は5Gスマホが製造できず、その悪影響が絶大だ。
ところが、昨年8月に発売された5G対応のMate 60 Proのメイン半導体には中国メーカー中芯国際(SMIC)の7ナノ世代品が使われている。言い換えれば、台湾や韓国、米国の大手にしか作れないメイン半導体は、中国勢によって作られた。これは米国にとってショックであり、華為制裁の失敗を意味する。