アメリカが制裁できないBYD
第三に、車載電池などEV基幹部品の内製化である。EV車のコア部品はエンジンではなく、車載電池だ。BYDは自動車と車載電池の両方を生産することができる珍しい存在だ。実際、日米欧でその両方を生産できるメーカーは存在しない。
韓国調査会社SNEリサーチによれば、2023年1~6月、BYD製車載バッテリーの市場シェアは15.7%、韓国のLGエナジー、日本のパナソニックを凌ぎ、一躍して中国の寧徳時代(CATL)に次ぐ世界2位となっている(表1を参照)。
出所) 韓国調査会社SNEリサーチにより筆者が作成。
BYD製の車載バッテリーは高品質(最大続行距離1000キロ)・低価格のため、第一汽車、東風汽車、長安汽車、テスラ、フォード、トヨタなど国内外の大手自動車メーカーにもサプライしている。車載バッテリーのほか、モーターや減速機、ブレーキ、空調、パワー半導体など主要部品も自前で生産し、タイヤとガラス以外は全て内製化している。言い換えれば、BYDはアメリカが制裁できない存在となっている。米中対立・分断が進む現在、BYDの主要部品内製化という「垂直統合」体制はその強みを発揮している。
2022年、BYDの研究開発投資は202億元(約4000億円)。この金額は純利益166億元を上回り、新技術の研究開発に対するBYDの執念と熱意が示される。現在、BYDは研究施設11ヵ所、研究開発要員6万9000人を抱える。倦まず弛まず新技術・高品質・低コストへの追求こそが、BYDの飛躍の源泉ではないか、と筆者は思う。