ガソリン車からEV車への素早い転換
それではBYD快進撃の秘訣は何か?
まずは明確なビジョンを持ち、常に先手を打って果敢に挑戦することだ。BYDのリチウム電池分野への参入も自動車分野への参入もEVへの参入も、例外なく果敢な挑戦の連続にほかならない。
第二に、BYDは誰よりも先に「脱炭素」という時代の潮流に取り組み、ガソリン車からEVなど新エネ車への転換を素早く実現させた。先述したように、BYDは06年にEV車の開発に成功し、テスラのEVモデル車「ロードスター」発表より2年も早かった。また、2022年4月3日、BYDは同年3月で「純ガソリン車の生産を終了し、今後、バッテリー式電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)に注力する」と発表した。BYDは世界で初めてガソリン車の生産を終了した自動車メーカーとなった。
2022年、BYDのEV市場シェアは11.5%、テスラの16.6%に次ぐ世界2位。PHEVのシェアは34.5%で世界1位、2位の独BMW(7.3%)の約5倍に相当する。
現在、売上と利益ではBYDがテスラに及ばないが、成長の勢いがテスラを凌駕している。2023年第2四半期(4~6月)BYDとテスラの決算発表を比較して見よう。売上はBYDが1399億元(約2兆8000億円)で、テスラ249.2億ドル(約3兆6100億円)に劣るが、伸び率はBYD67%対テスラ47.2%で相手を上回る。純利益については、BYDが約1365億円でテスラの3900億円に及ばない。しかし、伸び率はBYDが2.4倍増でテスラの19.7%増を圧倒している。
この勢いが続けば、2030年までBYDの売り上げも利益もテスラを追い越すシナリオが決して夢ではない。
BYD経営陣のEV転換決断の速さは、EVシフトに躊躇する日本メーカーと好対照ともなっている。