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第172話 快進撃が続くBYDの秘訣

中国経済の最新動向

BYDは日本にもやってきた

 現在、BYDは海外進出にも力を入れ、既に70ヵ国以上の販売拠点を持っている。今年1~8月、BYDはEV車とPHEV車合計12.5万台を輸出し、前年同期比で6.5倍増となっている(図2を参照)。通年では20万台を突破する見通しである。

出所) 中国汽車工業協会により筆者が作成。

 

 海外の生産拠点については、BYDはタイで年産15万台EVの新工場を来年に稼働する予定。ブラジルではEV乗用車、EVバス、車載電池など3つの工場を建設する予定。欧州では生産拠点の設置について関係国と交渉中という。

 

 ここに特筆すべきことはBYDの日本進出だ。BYDは日本の乗用車市場への参入第1弾として、今年1月末にEVスポーツ用多目的車(SUV)「ATTO3」を440万円で発売した。1-8月の累計販売台数は700台にとどまり、苦戦を強いられている。

 

 第2弾として、9月21日に小型EV「ドルフィン」を363万円から販売すると発表した。この価格設定は多くの競合他社を下回り、国内EV首位の日産自動車に追い上げることを目指す。グレードは2種類用意しており、航続距離はそれぞれ400キロメートル、476キロメートルとなっている。BYDはドルフィンを来年3月末までに1100台販売することを目指している。

 

 実は、BYDの日本進出は今回が初めてではない。2010年4月、BYDは車用金型大手のオギハラの群馬県館林工場を買収した。買収契約には土地と建物、設備の買収だけでなく、館林工場従業員80人の雇用も含まれていた。

 

 オギハラは1951年創業の自動車用金型分野の大手企業である。車体形成に関する技術には定評があり、主要取引先にはトヨタ、日産、ホンダ、GM、フォード、フィアット、ボルボなど世界の大手自動車メーカーが名を並べている。群馬県のみならず、アメリカ、英国、タイ、中国にも工場を持っている。

 

 オギハラの魅力は高い技術力とブランド力にある。この買収成功によって、BYDはオギハラの自動車ボディ用プレスの金型に関する高い技術及び館林工場で生産するドアやフェンダーを手に入れた。今のBYD主要部品内製化の実現は、実にオギハラ買収とも切っても切れない関係にある。

 

 話が戻るが、今回BYDの日本進出は13年前のオギハラ買収と違う。EVの日本進出の道は決して平たんなものではないからだ。日本の消費者はベンツやBMWなど高級輸入車に慣れ親しんでいるが、一般車に対しては目が厳しい。これまで外国一般車の日本進出の成功例はほとんど見られなかった。BYDはこの慣例を破り日本進出を成功させるか?それとも失敗を喫してやむを得ず撤退するか?筆者はBYDの日本進出の行方を見守っていく。

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