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採用・法律

第117回 民事信託のススメ

中小企業の新たな法律リスク

民事信託の具体例

賛多弁護士:より具体的にお話しましょう。ご高齢だけれども判断能力には何ら問題のないAさんがいます。Aさんは、自宅の他に収益物件、預貯金をもっています。Aさんとしては、高齢となってきたこともあり、不動産の管理を子であるBに任せつつ、賃料などの収益は今までどおりAさん自身で得つつ、自宅での生活を続けていきたいと考えています。この願いを叶えるには、委託者をAさん、受託者をBさん、信託財産を自宅、収益物件などの不動産、預貯金の一部などを信託財産とする信託契約を締結することになります。そして、この場合における信託によって得られる利益(受益権)を享受する受益権を、Aさんとすることになります。

 

杉山社長:なるほど。この受託者というのは、自由に選ぶことができるのですか。

 

賛多弁護士:はい。ご自身が信頼できる人を選ぶことができます。

 

杉山社長:私としては、私が亡くなった後も妻であるCに、自宅に住み続けてもらい、賃料を生活費にあててほしいと思っているのですが、そのような先のことまでは手当できないですよね。

 

賛多弁護士:いえ、民事信託はそのような願いも叶えることができます。信託契約締結時の受益者を杉山社長にしておき、杉山社長が亡くなった後の受益者(第二次受益者)を奥様であるCさんと指定すれば、杉山社長の願いを叶えることができます。

 

杉山社長:なるほど!私自身の希望を実現しやすそうですね。

 

賛多弁護士:そうなんです。民事信託は、オーダーメイドなんです。

 

杉山社長:遺言や後見制度との違いはありますか。

賛多弁護士:遺言は亡くなってから、後見制度は判断能力が低下してからという「事後」のタイミングで発動することになりますが、民事信託は契約締結時から、つまりまだお元気なうちに「事前」に財産管理等をお願いすることができる点ですね。

杉山社長:私が考えている「事前に」という点にばっちり応えていただける制度ですね。

 

賛多弁護士:そうですね。ただ、信託契約においては、受託者は信託財産を固有財産等と別に管理しなければならないという分別管理義務を負います。そこで、信託財産の不動産は信託の登記、預貯金については信託口口座を開設して管理することが実務上一般的です。特に、信託口口座は口座開設に応じてくれる金融機関を探すことが重要となります。

 

杉山社長:不動産に関しては、登記名義が変わるということですか。

 

賛多弁護士:そうです。登記名義が受託者名義に変更となることに抵抗を感じる方も多いですが、信託財産である不動産から得られる経済的利益の帰属先には変更がないので、安心してください。

 

杉山社長:なるほど…信託は魅力的な制度かと思いますが、いざやるとなると決心がなかなかつかなさそうな気がします。

 

賛多弁護士:それは、信託について正しい知識をもち、信託契約を締結することによって叶えることができるビジョンが見えたら変わってきますよ。民事信託は、委託者の「決断」が重要です。

 

杉山社長:分かりました。賛多弁護士、民事信託についてもっと教えていただけますか。

* * *

杉山社長は、賛多弁護士に財産管理を中心に今後の自身のライフプランを相談しつつ、民事信託についての理解を深めていきました。認知症となり判断能力の低下が起きた場合に備える方法として、民事信託という選択肢を検討してみてはいかがでしょうか。

 

執筆:鳥飼総合法律事務所 弁護士 横地 未央

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