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- 社長のための“儲かる通販”戦略視点
- 第183号 900兆円
この数字は、60 歳以上のシニア世代が保有する個人金融資産総額だ。約1,500 兆円に及ぶ日本の個人金融資産の6 割以上を、この世代が握っている計算となる。
超高齢社会の日本では、シニア層が3,000 万人を突破して、全人口の4 分の1を占めており、今後も、この高齢化率は右肩上がりで上昇していくことになる。
現預金・有価証券などを潤沢に持ち、消費や投資に意欲的なシニア層が存在感を増す中、企業活動のシニアシフトもより鮮明になってきている。
中でも、祖父母・親・孫の3 世代消費を促す、商品やレジャー・旅行といったサービスがかなり目立つようになってきた。
たとえば、30 周年を迎えた「東京ディズニーリゾート」では、60 歳以上を対象にした割引チケット「シニアパスポート」を用意。3世代でパークを楽しむ「3世代ディズニ
ー」を提案し、新聞広告やテレビCM で積極的にPRしている。
また、ショッピングセンターなどで主に子供向けの遊戯施設を展開するイオンファンタジーでは、2012 年4月から、孫を持つ65 歳以上を対象とした「イクジー会員制度」をスタートさせ、孫と訪れたシニアが遊びやすいように配慮した新型店の設置に注力している。
昨年12 月に開業したイオンモールの旗艦店である「イオンモール幕張新都心」でも、孫を中心とした親子3 世代が楽しめる体験型コンテンツを集結し、「コト消費」の
比重を高めた次世代のショッピングモールとして、新たなチャレンジをしている。
そして旅行会社のHISでは、3 世代での海外旅行を提案。代表者が割引になったり、幼児や子供の年齢などで料金を割引したりと、トータルの代金が安くなるプランを用意している。
1999 年に記念日として制定された「孫の日」(10 月第3 日曜日) も、これらの傾向を後押しする一つの要素だろう。
このように、祖父母と親・孫世代の交流に着目し、金銭的にゆとりのあるシニア世代の消費をいかに促進するかを「3世代消費」「孫消費」の角度から捉え直して、新た
な市場して創造した3世代消費マーケティングは、今後、大きな利益を生むビジネスとして、確実に増えていくはずである。
とはいえ、シニア層にとって金融資産は将来の備えでもあり、むやみやたらと消費しない。だが、孫と一緒に過ごす時間はかけがえのないものと感じている祖父母世代にとって、孫に関する消費は、一番財布の紐が緩みやすく、現に、祖父母が孫のために支出する額は、年間平均24 万6,000 円と推定されている。
我々売る側は、このようなシニア層の心理をよく理解し、「記念」となる要素や、「思い出」「ふれあい」といった3 世代消費を促す切り口からアプローチした、商品・サー
ビスを提供していく工夫・演出が求められている。