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愛読者通信

「環境が人をつくる」
今村暁氏 (日本そうじ協会 理事長)

「愛読者通信」著者インタビュー

 飲食・サービス・建設・メーカー・病院・金融機関・IT企業…。導入100社以上の業績を急伸させた、注目の〈掃除から始める今村式環境整備〉の効果について、お話をうかがいました。 

今村 暁(いまむら さとる)氏
(財)日本そうじ協会 理事長
1971年、静岡県生まれ。北海道大学法学部卒。日本長期信用金庫を経て、学習塾ビジネスで独立。数多くある受験塾と一線を画し、登校拒否児童や成績不振児童に独自の「習慣教育」と「そうじ道」のノウハウを駆使し、有名大学合格はもちろん、全国模試で日本一を8人輩出するなど、驚異的な実績を残す。2011年、「そうじ道」の普及と発展をめざし、「日本そうじ協会」を設立。理事長就任。NHKでは「掃除の匠」と紹介されて反響を呼び、活動の範囲は海外までに及んでいる。

Q:今村先生が指導されている「掃除から始める環境整備」にはどんな効果があるのでしょうか?

 仕事柄いろんな会社に行きますが、会社に行って環境をみれば、その会社の風土や文化がわかります。
 会社の風土や文化は、会社の規律であったり、社員の姿勢や仕事の基準であったり、習慣であったり、継続力であったりします。
 ひとことで言えば、環境はその会社の通信簿であると同時に、その会社の社長の信念をあらわしているのです。
 ですから、会社の環境はとても大事で、その大事な環境をつくるために掃除から始める環境整備が効果的なのです。
 こういうと「なんだ掃除か、掃除で会社が良くなるなら苦労はしないよ」とおっしゃる人がいますが、それは間違いだということが、取り組んだ各社の結果を見ていただくとわかります。
 2016年2月に出版した『人が育って儲かる環境整備』の第1章で取り上げた5社の事例が、その威力を如実に物語っています。
 具体的には、今村式の環境整備の効果は、5つあります。
 1つ目が「経済的効果」です。トヨタのムダ取りは有名ですが、環境整備に取り組むと、会社の中のムダが徹底的に取れて、生産性が格段に上がります。
 私が指導した銀行では、残業時間が大幅に減り、残業手当が年間4千万円も減りました。
 あるいは、銀行から破綻懸念先と評価されていた会社が環境整備によって立ち直り、いまでは15年連続の黒字を達成し、ボーナス7か月支給の優良企業に変身しました。こうした例は氷山の一角です。
 効果の2つ目は「時間的効果」です。
 社員の生産性が目にみえて上がるので、残業が激減し、メーカーであればリードタイムが短縮します。
 3つ目は「精神的効果」です。
 高いレベルで環境整備に取り組むと、誰でも心が前向きになります。
 環境整備の指導に会社に入って、3か月、6か月経って感想を書いていただくと、「社員が気づく人になった」「礼儀正しくなった」「感謝できる人になった」「仕事に生き甲斐を感じる」など、社員の心に大きな変化が起きてきます。そして社員一人一人の心の変化が、全体として良い社風を生み出していくのです。
 効果の4つ目は「対人的効果」です。
 環境整備は役職に関係なく、全員が同じ目的で同じ作業をするので、社内のコミュニケーションが格段に良くなります。
 5つ目の効果としては「肉体的効果」です。職場の安全性が高まり、事故が減ります。私は職場の空気の流れについても指導しますので、働きやすいうえに快適で健康にも良い効果をもたらすのです。

 

Q:業種に関係なく、取り組めるものでしょうか?

 業種はまったく関係ありません。
 もともと私は引きこもりの不登校児を指導する学習塾を経営していた経験から、掃除から始める〈良い環境づくり〉と〈良い習慣づくり〉が人を根底から変え、ヤル気を引き出すことに注目して、その教育メソッドを環境整備の仕組みとして構築しました。人を育てる仕組みですから、業種は関係ないのです。
 メーカーや飲食店だけでなく、病院や建設、サービス、本当にどんな業種にも有効です。たとえば、今年、掃除大賞を受賞したのは、みかん農家の谷井農園です。谷井農園は「世界一のジュースをつくるために世界一の環境をつくる」ということで取り組まれました。さきほど例にあげた銀行は、行員一人一人の仕事の効率を上げたいということで取り組まれたわけですが、一般的に、銀行などは掃除は外部の業者に任せてアウトソーシングすることが行員の生産性向上につながると考えますが、結果は逆でした。
 おもしろい例では、チャットワークというIT企業が環境整備に取り組んで、社員の生産性を格段にあげています。
 いずれにせよ、大きな成果を出している会社は、社長が率先して取り組んでいることです。部下に「儲かるから、やれ」では残念ながら効果は低いです。

 

Q:日本そうじ協会の理事長として毎年「掃除大賞」を開催されていますが、どういう目的でやられているのですか?

 2011年、「掃除の啓蒙活動を通じて、生活文化の発展と産業の発展に寄与し、より良い社会をつくりたい」という思いで、一般社団法人日本そうじ協会を立ち上げました。実行リーダーを養成するとともに、毎年「掃除大賞」の選定と表彰をおこなっています。
 これまでエントリーされた多くの会社を見てきまして、優れた会社の共通項がわかってきました。1つは、どの会社も無上位を目指し「究める」という点、2つ目は全員参加、3つ目は継続力、4つ目は数字で結果を表す文化があること、そして最後は、会社の理念やビジョンと一気通貫した環境整備活動をおこなっていることです。そういう会社は本当に強い会社といえます。

(聞き手/岡田万里)

「愛読者通信」(2016年4月)掲載

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