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戦略・戦術

第196話 「政府系銀行を活用しなさい」

強い会社を築く ビジネス・クリニック

 銀行は大きく二つの系統に分かれます。メガバンク、地銀、信金など民間の銀行と、政策金融公庫や商工中金の政府系銀行です。


 しかし、この二つの系統の特徴をよく理解して、資金調達をしている中小企業は少ないのです。


1)政府系銀行と民間銀行は、その目的が違います

 メガバンク、地銀、信金など民間の市中銀行は、金利や各種手数料などを収入とし、儲けることで経営を継続します。通常の株式会社と同じ、民間出資の
営利事業体です。利益を出し、永続的に経営を続けることが必要なのです。稼ぐことが目的なのです。


 一方、政府系銀行は違います。政府出資による株式会社です。そして主に、国会で決議された財政投融資の資金を、企業に届けるための橋渡しの役割を担います。


 財政投融資は今でいえば、コロナ融資です。地震・水害など激甚災害発生時の、復興融資も同様です。貸すことが目的なのです。稼ぐことが目的ではないのです。ここが民間の市中銀行とは、まったく違うのです。

 


2)政府系銀行は預金の必要がありません

 民間の銀行は、個人や法人から集めた預金を元にして、融資や運用を行います。

 一方、政府系銀行は、預金の必要がありません。国会で決議された予算に基づいて、財務省が政府系銀行へ、資金を投入します。その資金を、必要な企業などへ貸し付けるのです。


 民間銀行の担当者は、取引先企業にお願いして、必要のない融資を押し付けてきます。


「多めに融資しますので、多い分は定期預金でいかがでしょうか?」

 などと言ってくるのです。いわゆる、歩積み両建てです。これは、優越的地位の濫用に当たり、金融庁が禁止してい行為です。

 

 その点、政府系銀行は預金が必要ありませんので、このような事態には陥りません。

 

 

3)政府系銀行は余計なセールスに来ない

 民間の銀行は、やたらとセールスを勧めにやってきます。


 「リターンの有利な投資商品があります。」
 「事業承継のお手伝いをいたします。」
 「SDGS社債を発行しませんか。」


 一度でもそのセールスに応じると、“これはチャンスがある”と思わせてしまい、どんどんやってきます。そして銀行員のセールスに乗せられ、会社では不要なデリバティブや仕組債の商品を、借入をしてまで買い大損してしまった、という例も多々あるのです。


 セールスの対応には、結構な時間をとられます。タイム・イズ・マネーからすれば、大きなコストです。一方、政府系銀行の場合は、セールスで訪問に来る、ということがありません。政府系銀行は余計な時間をとられず、それだけでもありがたい存在なのです。

 


4)資金繰り難の折に待ってもらいやすい

 政府系銀行も、融資したお金の返済には敏感です。しかし、その姿勢は民間の銀行に比べると、かなり異なるのです。


 資金繰りが厳しい状況に陥っている会社がありました。民間銀行からも政府系銀行からも、借りれるだけ借りていました。当座貸し越し枠があるものの、常に枠いっぱい借りており、それ以上、借りることができない状況にありました。社長も経理も、常に金策に追われていました。


 社長曰く、

 「入金日の関係で、資金繰りが厳しいときは、政府系融資の返済日を少しずらしてもらいます。」と言うのです。


 「そんなこと、できるんですか?」と聞くと、

 
 「何日かの入金ズレで返済できれば、政府系は待ってもらえますよ。民間の銀行は厳しくて、数日でも待ってくれないです。」と、おっしゃるのです。

 
 融資資金の回収に対して、政府系銀行は民間銀行ほど厳しくない、ということです。それは、先に述べたとおり、政府系銀行は、政府による資金繰り支援を目的とした銀行であり、民間銀行は、集めた預金をもとに稼ぐことが目的、との違いによるものだと思われます。


 数日とはいえ、返済日を延ばすことを受けてくれ銀行がある、というのは、経営者にとっての安心材料なのです。

 


5)経営破綻時の追い込みがない

 民間銀行の場合、融資先が経営破綻に陥った際、その債権を銀行系の債権回収会社(サービサー)へ売却します。融資額の10%が相場です。


 そしてその不良債権を買った債権回収会社は次に、オーナー経営者への取り立てに動きます。10%で買ったので、それ以上の金額を取り立てれば、上乗せ分が債権回収会社の儲けになる、というわけです。
だから、容赦なく必死に取り立てます。執拗に追い込んでゆくのです。


 ところが、政府系銀行はここが違います。債権回収会社への売却がありませんし、取り立てもありません。

 

 実際に経営破綻された会社の元社長にお聞きしました。

 「政府系銀行からの借入金、8億円はどうなりましたか?」


 するとその元社長はこう言いました。

 「あれは全く返していないです。担当者が資料を作成してきて捺印したら、それで免除になりました。あれは助かりました。」とのことだったのです。


 政府系銀行の融資資金は顧客の預金ではなく、貸すために政府から入ってきたお金です。なので融資資金回収に、そこまで注力しないのです。経営破綻はしないほうがよいです。が、万一そのような事態に陥った際のリスクを思えば、追い込みのない政府系銀行は、ありがたい存在なのです。

 

 以上のように、政府系銀行にはいくつもの利点があります。中小企業が銀行交渉を仕掛ける折には、民間銀行だけでなく、政府系銀行をもっと活用してほしいのです。

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