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採用・法律

第147回 民事信託と任意後見

中小企業の新たな法律リスク

貸業を営む佐藤社長が、賛多弁護士のもとに相談に来られました。佐藤社長によると、自身が高齢になった際の経営に不安があるようですが…。

* * *

佐藤社長:私は、賃貸アパートを複数もっています。ただ、建物自体も古くなってきたため大規模な修繕が必要かと思っているのですが、自分が高齢となってきたこともあり今後どのように経営を行っていけばよいか不安に思っています。

 

賛多弁護士:ご懸念されているのは大規模修繕に当たっての銀行からの借入などですか。

 

佐藤社長:はい。そういった銀行との交渉業務もそうですね。それに、昨今は不動産の価格も動いているので、適切なタイミングで売却などもできるといいんですが…そもそもそのようなタイミングで自分が元気でいられる自信がないです。

 

賛多弁護士:佐藤社長として次世代に承継したい財産はありますか。

 

佐藤社長:はい、保有している不動産のうち、先祖代々のものがあるのでそれは佐藤家として承継して欲しいと考えています。しかし、他は必要に応じて売却などをしてもらって構いません。

 

賛多弁護士:それでは、民事信託を活用してはいかがでしょうか。まず、お持ちの不動産につき、管理等を任せたい人に信託する契約を締結します。その際、お持ちの不動産のうち、先祖代々のものは管理を任せる者に売却権限を与えず、他の不動産は売却権限を与えることで佐藤社長のご希望を叶えることができます。

 

佐藤社長:それは、私が亡くなった際にその不動産をどのように分けるかも指定することができるのですか。

 

賛多弁護士:はい、遺言と同一の機能もあります。民事信託を活用することによって、判断能力がグレーな時期も認知症になってしまってもご自身の財産を承継することも売却することもできます。 

 

佐藤社長:なるほど。ちなみに、今、認知症という言葉がでてきましたが、私がそうなってしまった場合、その民事信託を活用することによって身の回りのことまでカバーできるのでしょうか。

 

賛多弁護士:原則として、民事信託は財産管理の制度ですので、身の回りのことは別途任意後見という制度を併用することになります。

 

佐藤社長:任意後見とはどういった制度ですか。成年後見はよく聞くのですが…。

 

賛多弁護士:任意後見契約は、認知症になる前の時点で、自分の判断能力が低下した場合に自分の代わりに判断をしてもらう人を契約によって決めておく制度です。成年後見制度は、家庭裁判所に申立てをしてみないと誰が後見人になるかは分からないため、第三者が自分の後見人となるリスクがあります。

 

佐藤社長:なるほど、例えば子どもに後見人になって欲しいと考えた場合、予め任意後見契約を締結しておけばよいのですね。

 

賛多弁護士:その通りです。

 

 佐藤社長:しかし、その任意後見人が勝手に私の財産を使ってしまわないか心配です。子といえども…と思います。

 

賛多弁護士:そうですね。任意後見契約の場合、任意後見人として活動するためには、家庭裁判所に任意後見監督人の選任の申立をし、任意後見監督人の選任がされなければなりません。そのため、任意後見人が不正を働くことは防止できるかと思います。

 

 佐藤社長:なるほど。

 

賛多弁護士:任意後見契約は、佐藤社長が認知症にならなければ発動しません。いわば認知症になってしまった際に、預かりしれない第三者ではなく、自分の信頼できる人に身上監護等を任すことができるという安心を得る保険のようなものです。

 

佐藤社長:保険ですか。私の認知症になってしまったらどうしようという不安を解消できるかもしれませんね。前向きに検討します。

**************

佐藤社長のように、自身が認知症になってしまった場合の不安を抱えているという経営者は多いです。このような不安に対して、財産管理に関しては民事信託、身上監護については任意後見契約を締結することによって、元気なうちから相続に関する準備をすることができます。遺言とは異なる方法を使って、より明るい老後の実現をしてみませんか。

執筆:鳥飼総合法律事務所 弁護士 横地未央

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