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社員教育・営業

第20号 “銀行・保険業”のための全員営業の活用法【実践編】

社長のための“全員営業”

 

 『銀行・保険業は、営業マンではなく、社長の軍師を育てろ』

 
 中小企業の社長は、経営で困りごとが起きると、税理士に相談する傾向があります。
 
 しかし、もし優秀かつ信頼できる銀行・保険の金融マンがいた場合は、そちらにも経営相談するようになります。
 
 理由は、社長の身近にいて心理的にも最も近い外部の専門家である税理士に何回か相談するうちに、士業の本質は法律に準拠した手続き代行業だが、銀行・保険等の金融業務の本質は、経営支援であるということを肌感覚で実感するからです。
 
 銀行関係の営業マンは、その提供するサービスが資金繰りと直結するため、経営支援のパワーは同じ金融関係の中でも強力です。また、銀行そのものが持っている経営情報や人脈は、膨大かつ有益です。かといって頼みばかりしていると、後で必ず定期預金をお願いしますどいう話もでてくるため、そう何度も相談するという訳にはいきません。
 
 また、銀行関係の営業マンは、プロパー社員が前提であり、新卒から一つの金融機関にのみ属してことも多く、営業マン単体で見た時に、新たな知見や活用できる人脈は限定される場合があります。さらに、人事異動も頻繁にあり、その人間関係には中断がつきものです。
 
 しかし、保険の営業マンは、一部の超大手を除き、中途採用や転職者も多く、その経歴には多様性があります。また、同じように人事異動があっても、最初に契約を交わした営業マンとの個人的なつきあいが長くなる傾向があります。
 
 ゆえに、こと営業マンに対して、相談ごとや頼みごとや紹介ごとのやりとりは、保険会社の営業マンの方が、銀行関係の営業マンよりも多くなります。それを繰り返すうちに、やがて幅広い人脈や有益な情報を持っているということがわかると、保険会社との取引という度合いよりも、この営業マンとの取引という度合いが強くなっていくのです。
 
 金融業と一口にいっても、顧客が社長である場合、営業マンに持つ感覚としては、やがて以下のようなものになってきます。
 
 銀行業では、 営業マンの個人的サービス < 経営母体の付加価値サービス
 
 保険業では、 営業マンの個人的サービス > 経営母体の付加価値サービス
 
 ゆえに、銀行の営業マンに話をすると、銀行の上の方に話が通じやすい、あるいは銀行そのものを活用して助けてくれるということがわかると、中小企業の社長にとって、その営業マンは手放せなくなります。
 
 銀行の営業マンが意識すべきことはシンプルです。自分が属する金融機関を深く知ることや、どうすれば最大限活用できるかが、顧客サービスの肝となるからです。
 
 一方、保険業では、営業マンは会うたびに有益な経営情報をくれる。何か困りごとがあったときには、この営業マンに話すと解決に向かうきっかけやヒントが得られるとなると、その営業マンを手放せなくなります。
 
 それと裏腹に、会社が提供している商品・サービスしか、顧客に紹介できない保険業の営業マンには、既存客からの紹介は一向に発生しません。どこの社長が、単に商品の売り込みをかけるだけの営業マンを、大切な友人知人に紹介するでしょうか?
 
 自分を儲けさせてくれたからこそ、あるいは困りごとを解決してくれたからこそ、その感謝と恩返しとして、自分の競合にならない友人知人に紹介するのです。その関係性の強さは、時に、営業マンが転職し、別の保険会社に移ると、そこからの取引は、別の保険会社に変更されることすらあるほどです。
 
 では、何をすればいいか、実例を上げてご紹介します。
 
 日本経営合理化協会では、年に2回、30名以上に渡る有識者や専門家に登壇をしてもらう全国経営者セミナーを実施しています。
 
 述べ3日間かつ参加費も決して安くはありません。しかし、ある生命保険会社の営業マンは、この数年間に渡り、有給休暇を使って、自腹で地方から上京し、毎回参加しています。
 
 サラリーマンが年間数十万円×年2回の出費です。しかし、その営業マンは、割安と考えています。
 
 もし、自分一人ならば会ってもくれないだろう専門家と出会うことができ、参加後には、特に既存顧客の社長に対して、セミナーで得られた情報を伝えるのを、きっかけに訪問することができるからです。
 
 また、こうも言っていました。
 
 「さすがに講師が数十人もいると、何人かの既存顧客の困りごとに、今すぐ役立つ可能性ある専門家が必ず見つかるもんだよ」
 
 結果として、何年もの間、その生命保険会社の成績上位を達成し続けています。
 
 もちろん、それ以外にも、経営支援に役立つイベントやコンベンションがあれば、積極的に参加している上に、実際に会社経営をしている訳ではありませんが、一時期、土曜日には経営戦略のスクールに通うなどして研鑽もしていました。
 
 銀行業と保険業とでは、その経営母体や提供サービスおよび顧客ニーズによって、営業強化する方法は違ってきます。
 
 しかし、共通することは、その営業マンを媒介として、既存顧客や見込客がどれだけ商品・サービス以外の付加価値を受けられるかです。銀行・保険業の営業マンの業績達成が、商談スキルや交渉力を高めるだけだと限界が出てくるのは、それゆえです。
 
 銀行・保険業で、顧客が真に求めているのは、営業マンではありません。ましてや、商談相手が中小企業の社長に近づけば近づくほど、求められてくるのは、その営業マンが、経営上のアドバイザーや軍師となれる存在かどうかにこそあるのです。
 
 今回のポイント(〆の一言):
 銀行・保険業では、営業マンを媒介とした経営支援サービスこそが、付加価値の源泉となる。
 

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