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- 第82回「多様化するREIT(不動産投資信託)」
アベノミクスによる日本株の値上りと昨年1月から開始したNISA(少額投資非課税制度)により、これまで投資に無関心だった若年層にも株式投資への関心が高まっている。一方、上海市場の株価急落や中国経済の減速から起きた世界同時株安によって、株式市場の乱高下が続き、投資に関心はあるものの、怖くて動き出せない人も多いだろう。
投資型商品である個別株や国内外の株式投信、債券その他資産も組込んだバランスファンドなどは、ハイリスク・ハイリターンである。さまざまな要因で価格が乱高下しやすく、その変動率もますます大きくなっている。日経平均株価で見れば、8月は11日の高値20,946円から26日の安値17,714円まで、一か月間に最大3,232円の幅で変動している。滅多に起きることではないが、投資初心者を脅かすには十分な値動きだろう。
REIT(リート)とよばれる不動産投資信託は、不動産という実物資産が投資対象だ。ビルやマンション・倉庫などの実物の土地・建物の裏付けがあるから、下値にも一定の歯止めがかかる。株式や債券が発行会社の倒産などで紙くずになったり、個別企業の株価が暴落により短期間に3分の1になったりすることと比較すれば、そのリスクは限定されている。REITがミドルリスク・ミドルリターンともいわれる訳だ。
その日本のREITは、2001年9月2銘柄が上場して以来、現在では40銘柄以上が上場し、その時価総額も世界第2位になっている。近年注目されるのは、REITが投資する物件の種類が多様化していることだ。当初は大都市圏のオフィスビルに投資するタイプから始まったが、その後はマンションに投資する住居系、ショッピングモールなどに投資する商業施設系、これらの複数に分散する複合系が次々と開発されるようになった。
その後、通信販売の拡大に伴う物流施設の需要増加からロジスティックス(物流倉庫)系が大きく伸びて注目された。また、病院や高齢者施設を対象とする医療・ヘルスケア系や外国人観光客のインバウンド需要に期待したホテル系も複数が上場している。実に多様な不動産投資信託が販売されているから、その選択に迷う方も多いだろう。
REITの実態は投資法人で、税制上、その法人利益の90%以上を投資家に配当すれば、法人税等は課税されない優遇措置がある。そこで、株式会社が税引後利益から配当金を支払うことに比べて、配当利回りは高くなる。現状で東証一部上場企業の配当利回りが1.7%程度に対して、REITは3~5%程度になる。また、REITは年2回の配当支払いなので、決算期の異なる6銘柄を保有すれば、毎月配当金を受け取ることができる。
以上