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人事・労務

第87話 昇格昇進者の選考は真の能力主義

「賃金の誤解」

賃金管理研究所 所長 弥富拓海
http://www.chingin.jp
 
 責任等級制における昇格昇進とは、これまでの仕事の成績が高く評価され、さらに責任ある重要仕事を任されることです。身分として偉い人になれることを意味する訳ではありません。つまり能力主義は昇格昇進者の選考にこそ貫かれていなければいけないのです。
 
 さらに言えば、昇格者を選ぶということは明日のわが社を委ねるべき実力社員を選んでゆくことであり、その大切な選考に当たっては無難な社員ではなく、その役割責任を担うにふさわしい経験と仕事力を身につけ、上位等級でもリーダーとして信頼され、十二分に活躍できる人を候補者としなければならないのです。いくら高学歴で勤続が永く、良い人だとしても、補助者を付けなければ職責を全うできない人を順番だからと温情で上位等級の要職に登用してはならないのです。
 
 責任等級制の場合、昇格候補者の選考に当たっては等級別標準昇給図表をツールとして用います。この図表上に候補者を号数と年齢でプロットし、定められた昇格要件を満たしているかどうかを視覚的に確認します。その第一の重要判断が図表上に描かれている昇格基準線であり、この基準線を超えている、あるいは次回の昇給で基準線を超える位置(昇格候補者ゾーン)にいる実力社員をリストアップします。さらに以下3つの要素の判断を加えて適任者を絞り込むことになります。
 
(1)同一年齢で同一条件の場合にはより高い号数にいる者を優先する
(2)同一号数にいる場合は最近の昇給評語の優れている者を優先する
(3)同一要件を満たし、昇給評語もほぼ同じ場合には年齢の若い者を優先する
 
「(1)と(2)の判断については理解できる。しかし(3)については承服できない」とおっしゃる社長がおられました。
 
 特に上位等級への人材登用は経営的判断を伴う重大事項であり、職種適性等も考慮すれば、単純には決めにくいのですが、仮に昇格基準線を超えた位置に経験豊富なベテラン社員がおり、同時に可能性を確信させる若い優秀社員が昇格候補者ゾーンに達しているとしましょう。精鋭組織を維持するために、候補者を一人に絞らなければならない場合、いずれの社員を登用すべきでしょうか。
 
 昇格のための要件を等しく満たしている2人であれば、先ずはより若い社員を候補者として検討すべきです。なぜなら、若い社員を選んだ時の方が、上位等級での活躍期間が長くなるからであり、さらに幹部の仕事に挑戦させる機会を設定できるからです。
 
 昇格昇進者を選ぶことは明日のわが社の責任者を選ぶことであり、真の能力主義は妥協なく昇格候補者の選考に貫かれていなければならないのです。

 

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