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人事・労務

第88話 平成28年度地域別最低賃金額改定

「賃金の誤解」

賃金管理研究所 所長 弥富拓海
http://www.chingin.jp
 最低賃金とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低限度を定め、会社は、その最低賃金額以上の賃金を無期雇用の従業員から有期雇用の従業員まで、事業場で働くすべての労働者に支払わなければならないとする内容であり、全都道府県47の「地域別最低賃金」が年ごとに定められます。
 
 この「地域別最低賃金」は、全国的な整合性を図るため、毎年、中央最低賃金審議会が、経済実態に応じ、全都道府県をABCDの4ランクに分け、引上げ額の目安を提示し、地方最低賃金審議会が、その目安を参考にしながら地域の実情に応じた地域別最低賃金額(時給)改正のための審議を行っています。
 
 Aランクとは千葉、東京、神奈川、愛知、大阪の5都府県、Bランクは茨城、栃木、埼玉、富山、長野、静岡、三重、滋賀、京都、兵庫、広島の11府県、Cランクは北海道、宮城、群馬、新潟、石川、福井、山梨、岐阜、奈良、和歌山、岡山、山口、香川、福岡の14道県、Dランクは青森、岩手、秋田、山形、福島、鳥取、島根、徳島、愛媛、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄の17県となっています。
 
 この最低賃金は、(1)労働者の生計費、(2)労働者の賃金、(3)通常の事業の賃金支払能力を総合的に勘案して定めるものとされており、「労働者の生計費」を考慮するに当たっては、労働者が健康的で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう配慮するとされています。加えて今年は一億総活躍プランに最低賃金を毎年3%引き上げる方針が盛りこまれ、正社員と非正規労働者の賃金格差解消や、脱デフレに向けた大幅な賃上げを求める国の意向に沿う形となりました。
 
 最低賃金を計算する場合、対象となるのは毎月支払われる基本的な賃金であり、実際に支払われる給料からボーナスや残業代、その他臨時の手当・通勤手当・家族手当等の額を除外したものが対象となります。
 
 平成28年度の地方最低賃金審議会の審議結果が8月23日出そろい、7月に示された目安、Aランクは25円、Bランクは24円、Cランク22、Dランク21円を受けての審議でしたが、埼玉、兵庫、鳥取、島根、香川、高知の6県はこの目安を1円上回っています。全国平均は現在より25円(昨年度は18円)高い時給823円となりました。なお5年前の平成23年度の全国加重平均額は737円でした。
 
 この地域別最低賃金額は10月に時給金額で正式発効となります。ちなみにAランクの東京都の最低賃金は932円、大阪は883円、愛知は845円に、Bランクの静岡は807円に、Cランクの福岡県765円、石川県は757円に、Dランクの宮崎県と沖縄県は714円になり、すべての地域の最低賃金が700円を超えることになります。
 
 時給清算のアルバイトから、日給月給のパート、嘱託社員、そして月給社員まで、御社の相当職の給料を金額計算し、地域別最低賃金額と比較してみてください。
 
1.時間給の場合:時間給≧最低賃金額(時間額)
2.日給の場合:日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
3.月給の場合:月給÷1箇月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
 
 もしも支給実額が地域別最低賃金額を下回る社員がいる場合には、最低金額までの引き上げが必要となることは言うまでもありません。ご注意ください。

 

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