menu

経営者のための最新情報

実務家・専門家
”声””文字”のコラムを毎週更新!

文字の大きさ

人事・労務

第50話 残業時間の管理を安易に考えていませんか

「賃金の誤解」

 「わが社は機械製造の会社なのですが、短納期の注文も多く、お客様の希望を叶えるためには残業が避けられません。加えて個々の社員の残業時間管理も繁雑なため、平均的な残業時間を根拠に、みなし残業分として業務付加手当を支払っています。この業務付加手当は、定額支給で済むと理解していたのですが、それでは不十分だと聞きました。もし実残業時間を計算しで残業手当を支給するとなれば、金額的にも少なくなく、手間がかかりすぎます」。お客様第一の理念で業績を伸ばしてきた企業の総務担当長がこられたときの話です。
 
 労基法には、就業時間を1日8時間、週40時間以内と定められており、その法定労働時間を超える勤務が避けられない時には、36協定が必要であり、時間外労働に対しては25%の割増賃金が定められています(労基法37条1項)。 同時に、定められた手順で算出された手当金額が実残業時間の計算額を下回らなければ、このような支給方法でも問題はありません。
 
 ただし、実残業時間がこの業務付加手当で考慮された時間を超えていれば、定額に加えて差額分を残業手当として支払うことが必要です。
 
 そこで「御社では従業員の判断で残業させ、仕事の終了時ではなく、退社時にタイムカードを押させていませんか」。とお尋ねしました。「本来、残業には直属上司(管理監督者)からの残業指示が必要であり、部下から上司への残業申請と終了報告が必要です。みなし残業を設定している場合であっても、その考慮された時間を越えて残業をさせる場合には上司からの残業指示は必要であり、部署として必要以上に残業時間を増やさないためにもワンマンワンボス、部下から直属上司(管理監督者)への残業の終了報告はその都度必要です」。
 
 ところで、管理監督者の重要仕事のひとつとは何でしょうか。それは部下から預かる労働時間の管理責任者、つまりタイムキーパーだと常々申し上げています。直属上司がタイムキーパーとして役割を自覚し、責務を果たした時、初めて無駄な残業は減らせるのです。
 
 極論ですが、企業として慣習的に残業が多く、長時間勤務が美徳とされてきたとすれば、それは会社にとって何よりも大切な利益が組織ぐるみで横領されてきたのだと経営者は見方を変えるべきです。非能率で高コストな長時間残業をよしとしてきた現状を打破するためには、必要以上の残業は悪(罪)であり、個人のレベルでも、最低限度の残業で能率よく仕事品質を高めてきた事実を評価しあえる組織に変えていくべきです。そしてそれは時間管理の責任者たる直属上司による時間管理の徹底と部下一人ひとりの仕事品質の確認(年2回の成績評価制度)によってのみ実現できるものなのです。

 

第49話 高年齢者の再雇用・処遇と給料の決め方前のページ

第51話 上手な中途採用には社内バランスが大切です次のページ

関連記事

  1. 第8話 正社員の給料は条件付の年俸です

  2. 第73話 2014年実態調査レポートに見る役員報酬の動向

  3. 第101話 有効求人倍率は1.52倍となりました

最新の経営コラム

  1. 【昭和の大経営者】ソニー創業者・井深大の肉声

  2. 「生成AIを経営にどう活かすか」池田朋弘氏

  3. 朝礼・会議での「社長の3分間スピーチ」ネタ帳(2024年11月20日号)

ランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

新着情報メール

日本経営合理化協会では経営コラムや教材の最新情報をいち早くお届けするメールマガジンを発信しております。ご希望の方は下記よりご登録下さい。

emailメールマガジン登録する

新着情報

  1. キーワード

    第41回 リーバイス・トラッカージャケット with Jacquard by G...
  2. 人間学・古典

    第8人目 「岩倉具視」
  3. 社長業

    Vol.112 社長が持たなければならない「金のかなづち」
  4. 経済・株式・資産

    第54回 ライバルの戦意をそぐほどの徹底したローコスト経営「サイゼリヤ」
  5. 人間学・古典

    第58回 「恥の文化」
keyboard_arrow_up