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- 社長の右腕をつくる 人と組織を動かす
- 第156回 『マニュアルで自主性を殺すな』
あるファーストフード系の企業は、
そのセールストークに関する《マニュアル》の完全さで定評がある。
お客さんが店に入ってきたら、どういう挨拶をし、どういう注文をとり、
どうサービスするのか、おじぎの仕方から紙袋のつめ方、
つり銭の出し方に至るまで、ていねいに定型化している。
その結果、どの店でも同じようなサービスを受けられるので、
お客さんからの評判もよく、利益も満足のいくものが上がったという。
さてある日、赤ん坊を連れた女性客が店に入ってきて、カウンターで注文をした。
赤ん坊は従業員にニコニコ笑い掛けながら、彼の頭の紙の帽子をいじくり始めた。
彼は、アッと思ったが、赤ん坊のそうした行為に対する対処の方法は、
与えられたマニュアルには書いておらず、すっかり困り果ててしまった…、
という話を、かつて聞いたことがある。
(記憶がはっきりしないのだが、こんな大筋だったと思う)
このファーストフードレストランの例に限らず、
従業員に対する懇切丁寧な指導はまことに結構で、
そのためのマニュアル作りもよろしいが、
やはり、働く者の創造性とか自主性が本当の意味で、
心のこもった「自分自身の売り方」を作り上げていくのだと思われる。
従業員の自主性にゆだねられるべき間隙(かんげき)は、
企業の中で大切に育てられなければならないだろう。