日本でも世界でも、定期預金や国債の運用で資産家富裕層になった人はおりません。投資やビジネスの種銭(元金)は貯蓄だったとしても、その資金をビジネスの創業や不動産投資に振り向けたからこそ、お金持ちになったのです。特に日本では、企業経営者の中にも不動産所有割合の大きな『土地資産家』が、多数見受けられます。
しかし、不動産価格は過去20年間の経済停滞により値下がりしてきたばかりでなく、将来も人口減少によってその価値を毀損して行くというほぼ確実な予測があります。国立研究所のこの予測では、2004年の約1億2800万人をピークに日本の総人口は減少し始めて、今後40年程で3800万人が減少し、2055年には約9000万人になります。年平均で90万人の人口が減少してゆく様子は、例えば人口100万人以下の島根県・鳥取県・高知県・徳島県・福井県・佐賀県・山梨県等の人口が毎年順番に失われるようなものなのです。
このような社会変化は、業種を問わずあらゆるビジネス戦略に深刻な影響を与えるばかりでなく、私たちの生活設計や資産設計の見直しを迫っています。資産家の所有不動産に関しては、今後予想される相続税の抜本改正への対策ばかりでなく、もっと甚大な影響をもたらす人口減少・不動産需要の縮小・価値の毀損への対策が求められています。
不動産で資産形成に成功された人は、不動産の目利きができるからこそ、所有不動産にこだわりがあります。まして代々相続してきた不動産ならば、なおさら執着があることでしょう。勿論、経営上重要だったり、私的にも公益的にも歴史上重要な不動産は所有継続されねばなりません。しかし、それ以外の不動産は日本の有史以来の人口激減という環境変化に順応してこそ、本来の価値が後継者や子孫に承継されるのではないでしょうか。
そこで、不動産を投資対象にした不動産投資信託(REITと略称)に注目してみましょう。2001年から始まり現在38銘柄が東京証券取引所等に上場、不動産投資ながらいつでも売買できる流動性の高さが特徴です。主要都市のオフィスビル・商業施設・マンション・物流施設等に投資し、市況に応じて物件の組替えも行います。人口減少国であっても東京丸の内等特定の不動産は、海外投資家には「魅力的」と映っています。また、目を世界に転ずれば、米国・カナダ・豪州などの先進国は人口増加しており、これらの国に投資する「米国REIT」や「世界REIT」という選択肢もあるのです。現在はまだ難しい中国やインド・ブラジルなどの物件も、将来開発される世界REITに組み込まれることでしょう。
(注)REITとは、Real Estate Investment Trustの頭文字です。以上