私の友人で、素晴らしく人を扱うことに長じている者がいる。
ある時「秘訣は?」と訪ねたところ、
「特に…?、しいて言えば、“丁賞感微名”の法則を守っていることかなぁ…。」 こんな答えが返ってきた。
この“丁賞感微銘”の法則について聞いてみると、誰でもやれる、しかし誰もやっていない5つだった。
「丁」…… どんな相手にも丁寧に接する
「賞」…… 相手を心から賞める
「感」…… 感謝する
「微」…… 微笑を絶やさない
「名」…… 相手の名前を呼ぶ
ナルホドと感心した。人間の欲求には、マズローによれば五段階がある。
第一は 「物質的欲求・衣食への欲求」 であり、第二に 「安定への欲求」、
第三に「社会的欲求」、第四に 「尊敬への欲求」、そして、最後に 「自己実現への欲求」へと続く。
その友人は、人を動かす唯一の方法というべき“相手に重要感を感じさせる”ことを、熟知していた。
つまり、“丁賞感微名”は、相手の重要感を増す公式だったのである。
かつて私が受講したD・カーネギーの『人間関係と話し方』のレクチャーでも、同様のことを教えられた。
もし我々の祖先が、この燃えるような自己の重要感に対する欲求を持っていなかったとすれば、
人類の文明も生まれてはいなかったことだろう。
無教育で貧乏な一食料品店員を発奮させ、前に彼が50セントで買い求めた数冊の法律書を荷物の底から
取り出して勉強させたのは、自己の重要感に対する欲求だった。この店員とは ――― リンカーンである。
英国の小説家ディケンズに偉大な小説を書かせたのも、
18世紀の英国の建築家サー・クリストファー・レンに不朽の名作を残させたのも、
また、ロックフェ ラーに生涯かかっても使い切れない巨万の富を為さしめたのも、
すべて自己の重要感に対する欲求である。
金持ちが必要以上に大きな邸宅を建てるのも、やはり同じ欲求のためである。
「人間関係とは、まず相手を認めることと見つけたり―――」ということを、この“丁賞感微名”は教えてくれる。
(参考:D・カーネギー『人を動かす』創元社)
新 将命