人事担当者に聞くと、社員の採用面接の際に、学業成績が優秀であるかどうか以前にチェックするのは、明るく、元気が良いかということだという。神経が太いぐらいの方が、評価は高い。
ビジネスマンの間で、「うつ」が猛威を奮っている。「うつ傾向」も含めると、かなりの確率で、ストレスにより心を病む人が多いのだ。
現代はストレス社会だ。いろいろなビジネスマンと話していると、暗たんとする閉塞感を感じることが少なくない。
この時代を生きていくためには、ストレスマネジメントのスキルを身につける必要がある。
ストレスマネジメントの極意は「捨てること」である。
あれもこれもと抱え込んだあげく、精神的に身動きがとれなくなる。自分で自分に課したものの大きさに押しつぶされてしまうのだ。
ヤル気まんまんの人ほどおちいり易い落とし穴なので、身に覚えのある人は、手に余るものの一部を「捨てること」を自らに強制した方がよい。
私が管理職の階段を登り始めた頃、ゴルフはビジネスマンの必須科目。営業活動はゴルフ場のグリーンの上でやる、と考えられていた時代だった。
だが、私は、30代半ばで敢然とゴルフをやめることを決意した。
ゴルフに出かけると、週末の一日が完全に潰れてしまう。週末の一日は、もっと有効に使える。有効に使いたい。そう考え、ある日、ゴルフ訣別宣言を行なったのだ。
ストレスの大きな原因のひとつに、過剰な仕事がある。しなければならないことが多すぎるのだ。
だが、それらの仕事は、すべて絶対にしなくてはならないことだろうか。自分の手から離し、誰かに任せることだってできるはずだ。アウトソーシングを考えてもよい。機械化はどうか。やり方を変えてみては…?
手から離すことの不安は、誰でもある。「ちょっとムリしてでも、自分でやった方が納得がいく」ということもあるだろう。
だが、それをやっている限り、手元はいつまでたっても整理できない。やがて、手元が錯綜し、収拾できなくなる。その先が、「うつ」であるケースも稀ではない。
ドラッカー博士は、著書『プロフェッショナルの条件』の中で、仕事を整理するために大切な3つをあげている。
ひとつめは、「する必要のない仕事」を見つけること。コツは、しなかったらどうなるかを考えればいい。やめても問題のないことを、実に多くしているものだ。
2つめは、「ほかの人間でもできることは何か」を考えること。人にできることを任せれば、その人は育ち、自分は、本来自分が行なうべき仕事に専念できる。
3つめは、「自分が他人の仕事を妨げているようなこと」はないか、考えてみることだ。自分が納得するために、部下に同じような報告を何度も求めてはいないだろうか。いったん任せたはずなのに、何度も口をはさんでいないだろうか。
ムダを捨て、手元を整理し、心にスペースをつくると、さわやかに仕事に邁進できる。