現場のスタッフが肩で風を切るがごとく、自信をもって歩いている会社。
私が理想とし、実現すべく力を注いだ組織をたとえていえば、こういう組織である。
組織の基本的原則である『シンプル、スモール、スピーディ」を具現する手立てとして、
「スタッフ・ミニマム」ということについて考えてみたい。
ミニマムとは、最小限ということだ。
そもそも会社というのは、製造部門と販売部門が組織の中核であり、要である。
極論との非難も承知でいえば、作る部門と売る部門があって、
その他の部門は、すべてこの作る部門と売る部門をバックアップするために存在する。
総務部、人事部、経理部といった部門は、スタッフでありアシスタントである。
ラインである製造部、販売する営業部が、作りやすく売りやすく、
低コストでいいものを売れるように総力をあげて助けるのが、スタッフの仕事といえる。
このことをもう一度再認識する必要があるのではなかろうか。
私自身、現場スタッフが自信をもって歩ける会社を実現させようと努力したのもこのためである。
つまり、ライン部門の人員を増やすのはいいとしても、
ライン部門の人数を増やすのは危険だということだ。
現状では各社ともスリム化に躍起で、ほとんどの企業は増員どころではないだろう。
しかし、かつての大量採用、スタッフの増員についてきちんとした反省を行なった企業は少なく、
いつまたそうした傾向になるとも限らないことから、あえて強調したい。
さて、こうした話は、自分の立場に置き換えて考えてみることが大切だ。
あなたは、スタッフ部門の長である。
上から「スタッフ・ミニマム」というテーマが与えられたとして、どう対応するか。
少ないスタッフでうまく仕事をこなしていくためには、スタッフの質を高めることである。
次には、スタッフの仕事そのものを再検討して、
「会社にとって絶対必須の仕事」「できればやった方がいい仕事」「やらなくても済む仕事」
といった段階に分けて、うしろの二つは思い切って削ってしまうというように、
優先順位をつけることがポイントとなる。
この二つのことを考えただけでも、具体的に着手しなければならない点が明らかに
なってくるはずである。
なお、スタッフ部門の立場にある人に対するアドバイスを3つしておこう。
第一は、自分にとってサービスを提供する相手は誰かを考えろ、ということ。
スタッフにとっての「当面」のサービス相手はラインである。
「当面」というのは、もちろん「最終的」なサービス相手は消費者でありユーザーだからだ。
第二は、ラインに対する命令権が無いことを、自分の勉強のチャンスととらえること。
スタッフはラインに対する指示・命令権はもたないものの、
ラインに対する影響力を発揮する必要がある。
ということは、論理性や数字に基づいた説得力が問われるということだ。
逆説的にいえば、指示・命令権が無くても人は動かせるのだから、
指示・命令権といった権限が与えられれば、もっと人を動かせるということである。
そう考えて、説得力を身につけるチャンスにすることである。
第三は、ラインにはラインの論理があることを理解して、
是々非々でスタッフ側の理論との健全な妥協点や接点を見出す努力をするということだ。