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第143回 『「できる人」から「できた人」へ』

社長の右腕をつくる 人と組織を動かす

 
私は多くの部下の成長を見てきたが、最終的に結果をだしたのは、最初から、
「こいつはデキル。将来、楽しみだ」
と思うような人ばっかりだったわけではない。
 
目立たない存在だったが、気がつくと大きな存在になっている。
仕事にもどっしりとした地震が感じられるようになっている。
…そういう人も少なくない。
 
そういう人は、ほぼ例外なく、仕事に加え「人間力」でも、
階段を二段、三段と確実にステップアップしている人であることが多い。
 
 
Aさんは、勤務先の再生責任者だ。
勤務先は経営が成り立たなくなり、大手資本が介入して再生努力を続けているのだが、
Aさんは30代の若さで、その責任者に任命されたのである。
 
異例の人事だった。
誰が見ても、切れ者はほかにいた。
 
その中でAさんに白羽の矢が立ったのは、任命側からいえば、
「こいつは敵がいないから…」、
早くいえば無難な人だったというあたりが本音ではないか。
誰もがそう思った。
 
再建にあたり、一律30%の給与カットが実施されたこともあり、
かなりの人が会社を去った。
「引き取り先のある人はみんな去った」。
つまり、社外的にも仕事が認められる力のある人は、ほとんど去ったということだ。
 
だが、Aさんは、残った従業員たちを、能力の無い人とはとらえなかった。
「会社に、この上ない愛情をもっている人たち。
 ほかの可能性より、傾きかけている会社を立て直すことに
 意義を見出してくれた人」
と考えた。
 
 
Aさんが最初に実施したのは、全スタッフにメールを送り、
『会社再建にアイデアがないか? あるなら、ぜひ聞かせてほしい。』
と呼びかけたことだ。
 
営業、総務、工場の生産現場はもとより、
清掃や廃棄物処理のパートタイマーの人たちにも声を掛けた。そして、
『どんな小さなことでも、良いと思われることは全部やる。』と発表した。
 
この呼びかけに、たくさんの社員が応じた。
Aさんはさらに、『知恵を出し尽そう!』と呼びかけた。
 
それに応じて、全国から、休日の東京本社に200名近い社員が集まり、
終日、侃々諤々(かんかんがくがく)の議論をおこなったという。
 
交通費は会社がもったが、休日出勤手当は無し。
休みをつぶしての自主的な参加だった。
 
企業内の空気は、大きく変わった。社員たちは、
「自分は潰れかけた会社にしがみついている寄生虫ではない」
「自分の意志で危機を打開しつつあるのだ」
という意識になり、眼の光が日に日に変わってきた。
 
再生が始まって一年。厳しい状況は続いている。
だが、ついこの間まで社内に漂っていた絶望感は消えた。
 
代わって、「自分たちが変われば、きっと会社も変わる」
という、小さいけどキラリとした光が生まれてきた。
 
人には器量というものがある。
 
一見、無能な人材に見えたAさんは、意外にも、懐深く、
たいへんな器量の持ち主だったといえるだろう。
 
実は、Aさんを再生のトップにすえた人事には裏話があることを耳にした。
再生資本側が、ミドルクラスの従業員たちに、
「誰が適任だと思うか?」
とひそかに打診したところ、かなりの人がAさんの名を挙げたのだという。
その理由の多くは、「Aさんは話しやすい」というものだった。
 
誰に目にも切れ者と映る人や、いつも声高に騒いで人気のありそうな人がいる。
だが、長いビジネス人生で、しだいに光や輝きを増していくのは、
そうした人よりも、Aさんのように、目立たないけれど多くに受け入れられ、
支持を得ている人なのである。
 
 
人気のある人と人望がある人をはき違えたり、混同してはいけない。
 
宴会部長と呼ばれるような雰囲気を盛り上げることが上手い人も楽しい。
組織には、こうした潤滑油の役目をする人も必要な場合がある。
 
だが、本当に真価を発揮するのは人気者ではない。
経営トップに任命される側のAさんのように、
決して目立った存在ではないけれど、多くに人に支持されている
「人望の人」の方だ。
 
仕事が「できる人」は、どんな企業にもたくさんいる。
だが、多くの人の心をひとつのエネルギーにまとめる「できた人」は、
そういない。
 
Aさんは、貴重な体験をこやしとして、
「できる人」から、「できる、できた人」に進化を遂げることに
成功したのかも知れない。
 
 
仕事力(スキル)だけの「できる人」は、単なる専門家(スペシャリスト)。
リーダーは、人間力(マインド)も高い、「できる、できた人」。
 
 
 

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