下の写真は、私が週末にジョギングしている川沿いの風景です。絨毯を敷いて頂いたようで、いい気分でした。
さて、先回から「最強のモノづくり」におけるレベル3の「工場内の流れ」についてお話しを始めました。
レベル0:ダンゴ生産
レベル1:工程内の流れ
レベル2:工程間の流れ
レベル3:工場内の流れ
レベル4:工場間の流れ
レベル5:お客様への流れ
レベル6:一気通貫の流れ
さて、先回、スーパーマーケットでの買い物をたとえに、<カレーの材料コーナー>や<すき焼きの材料コーナー>という事例を使って、レベル3「工場内の流れ」における「商品別職場」の説明をいたしました。皆さん、ご自身の会社においてのレベル3のイメージが湧きましたでしょうか?
ところでつい先日、読者の方から「工場が狭いのでレイアウト変更は無理ですが、それでも工場内の流れを作ることができますか?」 というご質問を頂きました。
私の答えはもちろん “Yes” です。というのも、工場内に商品別の流れを作るといっても、必ずしも「物理的なレイアウト変更」が前提なのではなく、「管理的な考え方の変更」でも工場内の流れは実現できるのです。
そこで、この「管理的な考え方の変更」について、福島県で製罐業をしている(株)永沢工機という会社での改善事例をご紹介することにいたします。
(株)永沢工機では各種鋼板を切断し曲げて多くの部品を作り、次にそれらを溶接で組み立てて、最後に塗装をして商品を作っています。
商品が一品受注に近い構成のため、生産管理は大変に複雑で、専門の方が夜遅くまでかかって生産計画を作っていましたが、実際には計画通りにモノはできず、納期遅れの発生などで困っておられました。
そこで、レベル3の「工場内の流れ」を導入したのですが、永沢工機のやり方はレイアウト変更も多少はしましたが、大きくは生産計画のやり方を変えることで問題を解決しました。
それも実にシンプルなやり方です。まずは商品毎に台車(永沢工機では、これを「まとまる台車」と命名)を用意します。
そして台車にお客様の商品に対する注文の内容を書き、そこに示された工程の順番に正直に台車を移動させて行くのです。
普通の生産管理であれば、部品ごとに設備を割り当てて、日程を決めて、計画通りにモノができる前提で進行させますが、最終組み立ての直前に一部品がまだできてなくて大騒ぎ…といったことがよくあると思います。
しかしこのやり方の場合には、絶対そういう事件が起きません。何しろ一つの台車に一部品ずつ順番に作って台車に載せていくのですから。
ここまでの話を読まれて、この方法は絶対に我が社では使えないと思っている方も多いと思います。永沢工機でもそうでした。理論的にはちょっと変な話です。
例えば、このやり方では、ある商品製作については常に一部品の一工程しか稼働しません。普通の生産管理であれば、数点の部品を同時に、別々の設備で加工することが可能ですから早くできるけれど、この方法だとすべて、工程ごとに順番に作るから、ものすごく遅れることになるからです。
しかし、実際にやってみると新たな切り口が生まれるのです。それは現場の皆さんの経験と目で見える判断に基づいたチエなのです。
そしてその結果、永沢工機においては、圧倒的なリードタイムの短縮という成果を出されました。
それがどういうことかについては、次回に詳細をご説明します。トヨタ生産システムにおいても、カンバン方式は理論的には中間在庫を持つ仕組みですから在庫は増えるはずなのですが、実際には圧倒的に在庫が削減されることはご存知の通りです。永沢工機の方法にも、これと同じ流れがあるものと思われます。
以下に永沢工機のホームページ内にあるこの方法の説明のページをご紹介します。次回のコラム更新日までにぜひ一回訪問してみください。 http://www.nux.co.jp/kaizen/
ちなみに、永沢工機ではこの改善を論文にまとめ、日本IE協会の機関誌である「IEレビュー」に発表し文献賞を受賞されました。このやり方に対する評価と言えると思います。
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