『新物』のいりこ?
もうひとつ。これはつい先月、6月に出逢った商品です。やはり香川県での話なのですが、高松市の佐々木進商店で目に飛び込んできたのは、いりこです。関東では煮干しと呼びますね。カタクチイワシを煮てから乾燥させた、あれです。
いりこに新物はあるのか。あるんですね。梅雨の時季、カタクチイワシは旬を迎えます。このころに獲れるカタクチイワシを使ったいりこは、同社に言わせると「もう特別ないりこです」とのこと。
なにが特別なのでしょう。私たち一般の消費者にもすぐに理解できます。もうとても大きな姿なんです。長さが8cmを優に超える立派ないりこ。この時季だからこその「大羽(おおば)」と称されるカタクチイワシだそうです。
見映えだけでも圧倒されるほどなのですが、その味わいもまたいい。佐々木進商店から教わったダシの取り方に従ったのですが、鍋に水を張って、そこにいりこを投入します。頭もワタも取らなくてそのままで構わないそう。で、数時間そのまま放っておくと、もう見事なダシの完成です。甘みをもたたえた澄んだダシでした。火にかけなくてもダシがちゃんと出来上がっていて、あとはいりこをただ取り出すだけです。
そのいりこは、天ぷらにすると抜群でした。ダシを取ったあとの残りであるはずなのに、実はふっくらと仕上がり、香ばしさもたまりませんでした。
このいりこ、同県の伊吹島、人呼んで「いりこの島」で網元の手によって加工されているものだと聞きました。水揚げしてから20分で加工を始めるのが大事だとも…。静かで小さな島から、こんなすごい商品が送り出されているのですね。
先ほど触れたように、新物という訴求力はきわめて強いですし、そこを前面に押し出す販売戦略は正解だと改めて感じました。たとえ、その過程で作り手側の手間が増すとしても、固定ファンをつかむうえで大きな力となっているはずです。
で、思うわけです。ほかの業界でも、たとえそれが今回のような一次産品に限らずとも、実はこうした新物のような存在(この時季だからこそと謳える存在)って、探せばあるのではないか。また、そこに、これまで見逃されてきた商機があるのではないか。引き続き、私も探し歩いてみたいと思いました。
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