目標管理制度に求められる機能としては、大きく分けて、
① 企業目標と個人目標を統合することにより組織力を強化する
② 各人の自主的な取り組みにより個人の能力開発をうながす
③ 業績貢献度に応じた報酬の配分を実現する
の3つがあります。
それぞれの機能は、いずれも社員の自律性を促し、個々の能力開発や人材育成にダイレクトに繋がるものです。これは、目標によるマネジメントが、いわゆる優秀な社員の思考・行動プロセスを、組織的に取り入れるために仕組み化したものだと捉えると分かりやすいと思います。
ここでいう「優秀な社員」とは、現状に甘んずることなく課題・問題を見極め、それを解決するためにどのようにすべきかを、常に考えて実行に移し、成果を導くことのできる社員です。このような優秀社員の思考・行動パターンを体系化して社員全体のパワーアップを図れば、より強い企業へと成長することができると考えられます。
特に、組織の運営責任を担う幹部社員に対しては、経営計画と担当部門・部署の目標を連動させ、その達成過程を確認できるようにすることで、現時点の組織マネジメント力を客観的に把握できるようになります。
企業がより高い生産性を希求していくことに歩調を合わせるように、賃金や人事の処遇を決めるにあたっても「企業業績への貢献度こそが第一に考えるべきもの」とされやすく、売上高や営業利益のような定量目標ばかりが注目され、マネジメントの質の問題は後回しにされやすいという傾向にあります。しかし、処遇に反映すべき評価とは仕事の上に発揮された能力(=成績)をプロセスと成果の両面から評価するのが鉄則です。そして、管理職や幹部社員ほどマネジメントの質が問われなければなりません。
目標によるマネジメントが正しく機能するための前提として、まず社長より会社全体の経営目標と事業計画が示され、必要とされるそれぞれの事業領域に対して、バランスよく具体的な方向性が明示されていることが大切です。
ドラッカーは、著書「現代の経営」の中で、目標を設定すべき8つの事業領域として、マーケティング(市場における地位)、イノベーション(革新)、生産性、資源と資金、利益、経営管理者の仕事ぶりとその育成、一般従業員の仕事ぶりと行動、社会的責任を挙げています。事業計画においても、マーケティングや生産性、利益に関するものにのみ集中することなく、すべての分野を網羅し均整の取れたものであることが求められているのです。
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